高知大発ベンチャーのサンシキ(東京)が「カギケノリ」と呼ばれる赤い藻を混ぜた飼料の商品化に向け開発を進めている。牛のげっぷから排出され、地球温暖化の一因となるメタンを最大98%削減する効果が期待でき、高知大が培養技術を確立した。代表の久保田遼さん(29)は「海藻はいろいろな種類があって面白い。日本には良い技術があるので世界に出していきたい」と語る。
サンシキによると、メタンの温室効果は二酸化炭素(CO2)の約28倍。牛などの反すう家畜によるメタンの総排出量はCO2換算で世界の約5%を占める。海外の研究ではカギケノリを牛に食べさせると、メタンを最大98%削減する結果が報告されているが、効率的な培養は難しかった。
高知大総合研究センターの平岡雅規教授(56)(海洋植物学)によると、カギケノリは紅藻類の一種で沖縄近海など暖かい海に分布する。30年以上にわたって海藻を育ててきた知見を生かし、異物混入を防ぐ方法や培養に最適な光や温度などを研究した。1週間で約10倍に増やすことに成功し、メタン発生を抑える物質「ブロモホルム」の含有率が高くなる点も特長という。
世界銀行のリポートによると、メタン排出を抑える餌の市場規模は2021年時点で3千万ドル(約45億円)だが、30年までに20億ドル(約3千億円)に拡大するとの試算もある。
久保田さんによると、海外ではメタン排出を抑えた牛を使ったハンバーガーの販売や、家畜に対する炭素税導入などの動きがあり、需要が見込める。1日1頭あたり50円以下の価格を目標に、10トン前後の商業用タンクで実証実験を続けており「世界中の牛がこの飼料を食べるようになってほしい」と意気込んでいる。
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牛げっぷメタン 98%減 高知大発ベンチャー 藻混ぜた飼料開発
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琉球新報朝刊