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米インテル低迷 前途多難 AI向け開拓で出遅れ


米インテル低迷 前途多難 AI向け開拓で出遅れ 講演するインテルのゲルシンガーCEO=6月、台北(ロイター=共同)
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 米半導体大手インテルの業績が低迷している。生成人工知能(AI)向けの市場開拓で出遅れ需要を取り込めず、痛恨の事態を招いた。8月上旬には株価が約50年ぶりの下落率を記録した。人員削減といった経営再建に取り組むものの「インテル・インサイド」(インテル入ってる)のロゴで世界をリードした半導体の「盟主」の前途は多難だ。

歴史的下落率
 26%の急落―。米景気減速への懸念から大幅下落した2日のニューヨーク市場で、インテル株の前日比下落率は際立っていた。前日の4~6月期決算で純損益が2四半期連続の赤字だったことがきっかけだった。
 全従業員の15%以上の削減を含む100億ドル(約1兆4400億円)規模のコスト削減を進める方針を同時に明らかにしたが、市場からの評価は厳しかった。米メディアによると、1974年7月に記録した31%安以来の歴史的な下落率となった。
 68年創業のインテルは米カリフォルニア州サンタクララに本社を構え、半導体の設計から製造まで行う世界的メーカーだ。メモリーやプロセッサーを開発し、パソコンの処理能力の向上に貢献してきた。だが、生成AIブームに乗った競合エヌビディアが業績を飛躍させるのとは対照的に、足元の業績悪化が目立つ。

アーム株売却
 2021年に就任したゲルシンガー最高経営責任者(CEO)はトップメーカーへの返り咲きを狙い先端半導体の受託生産に乗り出したが、市場開拓の出遅れが響き伸び悩む。設計に特化するエヌビディアの生産を引き受ける台湾積体電路製造(TSMC)の4~6月期純利益が前年同期比36%増となる一方、インテルの製造受託部門の売上高は4%増にとどまる。
 8月中旬には保有していた英半導体設計大手アームの株式を売却し、約1億4700万ドルを調達していたことが判明。財務状況の改善が狙いとみられるが、受託生産が軌道に乗るまでには時間がかかるとの見方もある。
 2年前にインテルの経営に参画した半導体業界で名の知られる取締役の一人が再建方針の違いから今月退任したことも明らかに。名門復活に向け、当面は苦境が続きそうだ。(ニューヨーク共同=杉山順平)