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内部留保、12年で2倍超 人件費への還元焦点


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 財務省が2日発表した法人企業統計では、企業の内部留保に当たる2023年度の利益剰余金が、前年度比8・3%増の600兆9857億円と12年連続で過去最大となった。11年度からの12年で2倍超に拡大した。人件費は、ほぼ横ばいの状態が続いてきたが、足元で上昇の動きもある。企業が利益を従業員に十分還元していくかどうかが焦点になる。
 企業の内部留保は、アベノミクスによる対ドルの円高是正を機に12年度から増加が続いている。輸出企業を中心に稼ぐ力は強まったが、賃金上昇にはなかなかつながらなかった。将来のリスクに備える動きが強まったためとみられる。
 企業は新型コロナウイルス禍で人件費を抑えた。企業の倒産件数の抑制につながった可能性もあるが、内部留保の伸びを考慮すると人件費は不十分との見方もある。
 歴史的な円安が23年度の経常利益を過去最大に押し上げる一方、物価高を招き家計を圧迫。大企業を中心に今年の春闘では高水準の賃上げが実現し、実質賃金は6月にプラスに転じたものの、プラスが続くかどうかは楽観視できない。
 ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「前向きな賃金上昇の動きは出ている。実質賃金のプラス定着のためには、企業収益の持続的拡大に応じたさらなる賃上げの継続が必要だ」と指摘した。