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採算可視化サービス 中小の収益改善支援


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 中小企業の生産性向上を後押ししようと、地域金融機関の間で中小企業の採算性を可視化するサービスが広がっている。企業が商材ごとの利益率を把握したり、赤字商材から撤退するかどうかを判断したりする根拠となるデータを提供するサービスだ。金融機関にも融資先の経営状況を数値化し、将来性を見極められるメリットがある。
 石川、富山、福井3県を地盤とする北国フィナンシャルホールディングス傘下のコンサルティング会社CCイノベーションは、前身の北国銀行コンサルティング部時代の2015年から原価計算のサービスを始めた。
 当初は売上高から原材料費などの変動費を差し引き、人件費や家賃などの固定費を上回る利益(限界利益)を稼げているかどうかを確認した。
 18年ごろからは製造に関わる直接労務費、工程ごとの部品調達費、検査などの間接費も細かく把握するサービスも開始。製品ごとの原価が分かり、見積もりや価格交渉、受注の見直しなど製品ごとの具体的な改善策を提案できるようになり、主に売上高20億円以下の約200社が利用した。三重県信用保証協会は21年4月から県内に本店を置く地域金融機関と連携し、採算可視化を通じた伴走型企業支援事業「三重県モデル」を展開している。
 金融機関からの出向者、中小企業診断士など13人のコーディネーターが、主に売上高5億円以下の企業約400社を対象に、業況が悪化する前の予防的措置として採算可視化を実施したという。
 栃木銀行傘下のとちぎんキャピタル&コンサルティングも21年4月から採算管理分析を始めた。新型コロナウイルス禍をきっかけに自社の経営実態を見つめ直す企業が増え、40社以上が製品別、顧客別の採算可視化サービスを受けた。横浜銀行は4月から企業支援を手がけるブレイン・アンド・キャピタル・ソリューションズ(東京)に中堅職員を派遣。採算可視化などを通じて収益改善支援の実務を学んでいる。
 中小企業の人手不足は深刻で、生産性向上による賃上げは待ったなしだ。中小企業の伴走者である地域金融機関は、採算可視化サービスを通じて企業の収益改善を後押しするべきではないだろうか。
 (共同通信編集委員・橋本卓典)