日本製鉄が鉄鋼大手USスチール買収を巡り、ワシントンで米当局と現地時間11日に協議することが関係者への取材で分かった。日鉄の森高弘副会長が買収案を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)高官と会談する。引き続き計画承認を求めるが、情勢次第ではいったん買収申請を取り下げた上で、11月の米大統領選後に再申請する案も検討している。大統領選に絡み政治問題化した買収計画は重大局面を迎えた。
日鉄のUSスチール買収を巡っては、バイデン米大統領が買収阻止の行政命令に向けて最終調整しているとされ、民主党候補のハリス副大統領、共和党候補のトランプ前大統領がともに反対を表明。USスチールの本社のある東部ペンシルベニア州は大統領選の激戦州の一つとなっており、労働組合票を取り込む狙いがあるとみられる。
このため日鉄は、CFIUSの審査が完了して大統領の命令が出る前にいったん買収申請を取り下げた上で、選挙後に政治情勢が安定するのを待って改めて申請する案も模索。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は10日、日鉄が数週間前に申請取り下げを打診したとも伝えた。取り下げと再申請にはCFIUSの承認が必要だが、今のところCFIUSから返答はないという。
今回の協議はこうした情勢を見極め事態の打開を目指すためとみられ、日鉄は臨機応変に対処しながら買収を実現したい考えだ。米欧メディアによると、CFIUSは買収により「米国内の鉄鋼生産能力が削減される可能性がある」と日鉄に指摘。ただFTによると、買収が米鉄鋼業に打撃を与え米国の安全保障上のリスクとなる恐れがあるとのCFIUSの見方に対し、CFIUSメンバーの国務省と国防総省は同意しなかったという。
有料
日鉄、米当局と買収協議 USスチール 大統領選後に再申請も
この記事を書いた人
琉球新報朝刊