医療機関での窓口負担が3割となる75歳以上の対象を政府が広げようとする背景には、医療費膨張への危機感がある。高齢者数がほぼピークとなる2040年度に向け費用は伸び続け、原資となる保険料や税金は増すばかり。ただ痛みを伴う改革には、高齢者の反発が避けられない。国政選挙を控えた与党が慎重論に傾く可能性があり、実現への道筋は見通せない。
政府推計によると、医療費は窓口負担を除いた給付費ベースで25年度の約48兆円から40年度に70兆円程度へ増える。うち75歳以上の給付費は、原資の約5割を税金、約4割を現役世代の保険料で賄う。医療費増大は働き盛りの世代の負担増につながりやすく、抑制が不可欠だ。
政府は、3割負担の対象拡大のほか、介護サービス利用者の負担引き上げなども検討する。昨年策定の社会保障の改革工程表で、いずれも課題として掲げた。
ただ、容易に結論が出るかどうかは不透明だ。早期の衆院選が取り沙汰される中、与党から国民の負担増は打ち出しにくい。政府関係者は「国会議員は全員、来夏の参院選まで見据えている。それが終わるまで本格的な議論はできないだろう」とみている。
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痛みに反発、実現見通せず
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琉球新報朝刊