自民党総裁選に立候補した河野太郎デジタル相が、年末調整を廃止し、全ての納税者に確定申告を義務付けることを公約に掲げ、波紋を呼んでいる。政府が納税者の所得を随時把握して、素早い経済的支援などにつなげる構えだ。ただ、納税者や税務当局の作業負担が増えるとの指摘があり、他の候補者から慎重意見も出ている。 (3面に関連)
河野氏は自身のX(旧ツイッター)で3日、「真に支援を必要としている人を把握し、迅速に支援につなげる」などと投稿し、移行期間を経た上で年末調整の廃止に踏み込んだ。河野氏によると、企業が給与を支払うたびに所得などのデータを政府の窓口機関に送信し、税務署や市区町村、日本年金機構と情報を共有する。所得が減った人などをできるだけ早く特定し、現金給付などの支援につなげる。
河野氏は、企業にとって税務署などへの書類送付が不要になり「大幅な事務コストの削減につながる」と強調。一方、従業員は、マイナンバーカード取得者向けサイト「マイナポータル」で所得情報などを確認し、確定申告をする流れだ。マイナポータルの利用普及などデジタル化をどれだけ進められるかが課題になる。
年末調整は、所得税法で給与を支払う企業に対応を義務付けている。従業員から生命保険料の控除など関係書類を提出してもらい、税額の過不足を計算して還付や追加の徴収をする仕組みだ。
他の候補者のうち、小林鷹之前経済安全保障担当相は「国民に煩雑な事務負担を強いることになりかねない」と指摘。林芳正官房長官は「年末調整は所得税の手続きを簡便にする観点から設けられた」と述べた。
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河野氏「確定申告義務付け」に波紋 総裁選公約で主張、作業負担増指摘も
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琉球新報朝刊