大手電力7社が、使途に原発への投資を明示した「トランジションボンド(移行債)」の発行に関心を示していることが14日、分かった。発行済みの九州電力と関西電力では最大約3倍の応募があった。東京電力福島第1原発事故後、原発への賛否は割れているが、岸田政権が活用方針を示したことで、脱炭素投資の資金を集めたり、検討対象になったりしている現状が電力各社などへの取材で浮かんだ。
柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働が視野に入る東電は取材に「予定はないが、資金調達の選択肢の一つ」と回答。中国電力は「発行を検討する可能性がある」、原子力規制委員会の審査が長引く北海道電力や中部電力は「関心を寄せている」と答えた。
九電が5月に発行した移行債は既設原発の安全対策に使途を限定。総額100億円の5年債に約3倍、200億円の10年債に約1・1倍が集まった。関電が7月に募集した移行債は原発のほか、既設火力発電所や送配電網の設備更新に充てる。総額300億円の5年債には約1・8倍、総額150億円の10年債は約1・2倍集まった。
移行債発行の主幹事を務めた、みずほ証券は「しっかりお金が付いた。原発活用に対する市場の信認を示した」とする。ただ政府や産業界が求める原発の新たな建設には数兆円規模の資金が必要。経済産業省幹部は「新設につながるかと言えば額が違う」と話す。
政府は次期エネルギー基本計画で、国内でのデータセンター拡大が電力需要増加をもたらすとして、廃炉となった原発の建て替えを含む最大限活用を盛り込む方針。
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原発移行債に7電力が関心 脱炭素投資で資金集める
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琉球新報朝刊