【ワシントン、東京共同】日本製鉄のUSスチール買収計画に関する米当局の結論が、11月の米大統領選後に持ち越される見通しとなった。買収に伴う安全保障上の問題点を審査している対米外国投資委員会(CFIUS)が日鉄による再申請を認めることが17日(日本時間18日)に判明。これを受けて日鉄は23日までに申請を取り下げ、出し直す。審査は12月下旬まで延びる見込みだ。
今月初旬にはバイデン米大統領が阻止に向けて最終調整に入ったと複数の海外メディアが報道した。CFIUSが再申請を承認することで、買収計画の頓挫は当面回避される。ただ選挙後に買収が認められるかどうかはなお予断を許さない。
日鉄は審査について「コメントできない」と回答した。関係者によると、23日までに再申請することで新たに90日間、審査期間が延長されるという。11月5日投開票の大統領選を過ぎれば、政治介入のリスクが低くなることを期待する。
一方、CFIUSは買収による米国内での鉄鋼生産の減少などを懸念しているとされる。ロイター通信によると別の関係者は、安全保障への影響について協議するために時間が必要だと話した。現地では日鉄の投資を受けられないことで地元経済が悪影響を受けるとして買収阻止に反対する動きもあり、判断先送りにつながったとみられる。
USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は今月17日、買収計画について「最終的な決定に自信を持っている」と述べた。
買収を巡っては、昨年12月の発表直後に全米鉄鋼労働組合(USW)が反対を表明。USスチールの本社が大統領選の行方を左右する激戦区の東部ペンシルベニア州にあり、民主党と共和党の両陣営が労組票を取り込もうと買収に反発した。
日鉄の森高弘副会長は今月訪米し、CFIUSの高官と協議していた。
対米外国投資委員会(CFIUS) 外国から米国企業への投資について、安全保障上の問題がないかどうか審査する米機関。委員長は財務長官が務め、司法省や商務省、国防総省、国務省などの代表者らで構成する。審査で問題があると判断した場合、CFIUSは大統領に取引の阻止を勧告する権限を持つ。リスクを軽減するために当事者と協定を結ぶこともある。
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米、日鉄の再申請承認 USスチール買収 大統領選後に結論
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琉球新報朝刊