全国のスーパーで相次いだコメの品薄を受け、毎月決まった量が宅配されるサブスクリプション(定額利用)が注目を集めている。購入制限や突然の値上がりを気にせず確保できる安心感から、注文は増加傾向だ。農家には生産計画と収入の見通しが立ちやすいメリットがあり、コメの新しい消費形態として普及が進みそうだ。
東京都杉並区の「小張(こばり)精米店」は、全国の農家や卸売業者から独自に仕入れたコメを毎月、注文者に届けるサービスを手がけている。コシヒカリやひとめぼれといった銘柄を2キロ当たり月額2千円から販売しており、足元の申し込み数は例年と比べ2割ほど増えた。
本来は各地の名産を味わいたい人向けに始めたもの。小張正就(まさなり)代表取締役は「普段使いを想定した注文が増えたのではないか」と話す。
食品宅配大手オイシックス・ラ・大地は今月5日、2025年産米を年間購入するための先行予約を早々に開始した。実際に商品が届くのは25年10月ごろからだが、1日で千件を超える申し込みがあるなど反響は大きい。24年産米の予約量は今月17日時点で前年累計の約1・8倍となった。
オイシックスは予約状況を踏まえ、契約農家に生産を依頼している。茨城県筑西(ちくせい)市の農家大嶋康司(やすじ)さんは「店頭価格の乱高下に左右されず収入が安定する。設備投資などの来年以降の計画が立てやすい」と強調する。
一方、品薄の影響を免れなかったケースも。全農パールライスが運営する「お米列島頒布会」は8月配送分で予定した数量を調達できず、違う銘柄に変更するなどの対応を迫られた。
広報担当者は「原料となる玄米価格の上昇が見込まれ、販売価格の改定も予定している」とコメントした。
<用語> サブスクリプション 「定期購読」の意味で、英語のつづりは「subscription」。商品やサービスを一定期間利用し、料金を支払うビジネスモデル。「サブスク」と略され、毎月定額を払うのが一般的だ。導入事例は動画配信サービスから漫画雑誌、食料品まで多岐にわたる。消費者は毎回購入する手間を省けたり、価格が割安になったりするのが利点で、事業者も収入の安定につながる。