日本製鉄が米鉄鋼大手USスチール買収計画を巡り、対米外国投資委員会(CFIUS)に審査を再申請したことが24日、分かった。審査期間はこれまで米東部時間23日が期限だったが、90日間延びる。買収の可否を巡る判断は、11月の米大統領選後に先送りとなる公算が一段と大きくなった。日鉄は買収実現に向け、米国内の鉄鋼生産縮小などを不安視する米国側との協議を続け、懸念払拭を急ぐ。
ロイター通信によると、CFIUSは日鉄が米国内の生産をインドに移転する可能性を懸念しているという。日鉄が成長市場のインドの鉄鋼メーカーを買収し、生産体制を拡充しているためだ。米鉄鋼産業を守る関税政策に日鉄が反対し、政策実行の妨げになる恐れもあるとみている。
こうした懸念に対し、日鉄は既にUSスチールの米国での国内生産を優先する方針を公表。製鉄所への追加投資で生産能力も高める。日鉄幹部は取材に「インドへの投資は米国への輸出を考えたものではない」と話す。
さらに、USスチールが関税引き上げなど通商措置を米政府に対して請求しても、日鉄は干渉しない立場を明確にした。
日鉄によるUSスチール買収を巡っては9月初旬、バイデン米大統領が阻止に向けて最終調整に入ったと複数の海外メディアが報じた。一方、CFIUSが日鉄による再申請を認めることが18日に判明。結論が米大統領選後に先送りされるとの見方が強まっていた。
買収に反対している全米鉄鋼労働組合(USW)との関係改善も鍵になる。日鉄とUSスチールは米東部時間23日、日鉄の森高弘副会長がUSWに所属するUSスチール従業員に宛てた声明を公開。USWが不正確な文書を公開しているとし、買収後にUSスチールの高炉を長期間維持することや、雇用や年金を守るといった約束は「法的拘束力がある」と強調した。
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日鉄、買収計画を再申請 米当局懸念払拭へ継続協議
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琉球新報朝刊