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「金利ある世界」回帰象徴 家計、求められる自衛策   


「金利ある世界」回帰象徴 家計、求められる自衛策    オープンハウスのショールームでマイホームの内装を検討する坂下直史さん(右)=9月27日、東京都渋谷区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 変動型の住宅ローン金利が17年ぶりに上昇する。日銀の利上げによって「金利のある世界」に戻ったことを示す象徴的な動き。物価高も直撃する家計は、住宅ローン借り換えなど、さまざまな自衛策が求められそうだ。

 先高観が追い風

 「金利は今後も上がり続ける。なるべく早いうちにと思った」。東京都立川市の会社員坂下直史さん(27)は、住宅ローンの金利動向がマイホーム購入の後押しになったと振り返る。住宅金融支援機構が4月に実施した、住宅の購入予定者に対する調査でも「今が買い時」と答えた人の半数弱が、今後の金利上昇を理由に挙げた。
 三菱UFJ銀行など大手行は30日、変動型の住宅ローン金利を算定する土台となる「基準金利」を10月から引き上げると発表。優良企業に融資する際の優遇金利「短期プライムレート」に連動しており、大手行では約17年ぶりの上昇となる。

 値上げラッシュ

 自民党の石破茂総裁による新政権発足後も日銀が利上げを進めるとの見方は根強く、金利先高観は当面の住宅販売に追い風となりそうだ。住宅大手のオープンハウスで営業を担当する赤塚晴大さんは「昨年に比べると住宅購入の相談が増えている」と明かし、販売拡大に期待感を示す。
 住宅ローンを既に借りている家庭にとって、金利上昇は負担増に直結する。住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を手がけるMFSの塩沢崇さんの試算によると、35年返済を前提として金利が0・15%上がれば、元本3500万円で約2300円、5千万円で約3300円それぞれ毎月の返済額が増える。
 帝国データバンクの調査では、10月の食品値上げは2911品目と「年内最大の値上げラッシュ」(同社)に。調査担当者は「身近な商品やサービスの値上げ傾向は当面続きそうだ」と話し、家計への逆風は今後も続くと見込まれる。
 こうした負担増の波に個人が打てる手は何か。金融相談サービスのブロードマインドでファイナンシャルプランナーを務める滝川泰史さんが有力な選択肢として挙げるのが、住宅ローンの見直しだ。

 引き下げ交渉も

 基準金利自体は約15年間変わらずに来たが、そこからの優遇幅は各行が拡充を続けてきた経緯がある。滝川さんは「2016年以前に借りた人は返済額が抑えられる可能性が高い」と語り、他行への借り換えや金利の引き下げ交渉を検討すべきだと指南する。
 このほか生命保険の見直しなども考えられる。金利の上昇は、家計の在り方を再検討するタイミングを告げているといえそうだ。