石破茂首相は3年間の集中的な取り組みによりデフレからの完全脱却を目指す。まず物価高克服などのため、経済対策の取りまとめと補正予算編成を急ぐ。成長戦略やエネルギー、食料安全保障など山積する経済課題への対処も待ったなしだ。物価高抑制に向け日銀との連携も不可欠となる。
石破首相は物価高対策やリスキリング(学び直し)支援などを経済対策に盛り込む方針。デジタル化などの投資を促進する施策も手がける。これまで一連の施策実現に「補正予算は当然必要になる」と説明していた。
物価高対策では、電気・ガス料金やガソリン代の補助を続けるかどうかが焦点だ。衆院選を控える中で支持獲得につなげるため、石破首相は継続に前向きとみられるが、補助の累計額は11兆円を超えており、財政をさらに圧迫しかねない。
岸田文雄政権で経済政策の柱となった賃金引き上げも重視する。予算編成の中核を担う加藤勝信財務相は賃上げが「一番大事だ」と述べ、所得向上の実現にまい進する考えを強調した。
成長戦略では、半導体産業の育成を引き続き推進する。2027年に次世代半導体の量産開始を目指す「国策会社」ラピダスへの支援が鍵となる。5兆円と見積もる総投資額に対し、政府は既に9200億円の助成を決定。国民の理解を得ながら、支援の財源確保や民間投融資の促進をできるかどうかが試される。
経済対策以外では、エネルギー基本計画の改定が待ち受ける。40年度の電源構成がポイントとなる。地球温暖化が問題となる中、原発や再生可能エネルギー、火力発電の道筋をどう示すかに注目が集まる。24年度中に結論を得る見通しだ。
食料安全保障には農政通の石破首相が関心を寄せる。食料の多くを輸入に依存する中、ロシアのウクライナ侵攻で穀物価格が高騰し食品が値上がりしたことが背景にある。スマート農業普及による生産性向上を急ぐ。
小里泰弘農相は「食料自給率を上げるため現場が意欲を持って生産できる体制が必要だ」と語る。
日銀との協調も石破政権に求められる。日銀は2%の物価安定目標に向け、利上げの時期を探っている。石破氏は9月末のテレビ番組で「今の金融緩和の方向性はこれから先も維持しなければならない」と発言したが、利上げ観測が後退すれば円安が進み、物価高が加速する可能性がある。
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物価高 日銀と連携も 成長戦略、食料安保課題 デフレ完全脱却へ
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琉球新報朝刊