2021年秋に本格化した食品値上げの動きは4年目に突入した。今年9月までにのべ6万品目超が値上げしたが、10月には今年最多の2911品目が上がる。物流費や人件費が上昇を続けているためで、原材料価格の高騰も追い打ちをかける。影響を抑える取り組みも進むが、値上げは今後も続きそうだ。
天候不順
原材料価格でも上昇が激しいのが、チョコレートの原料となるカカオ豆だ。ガーナなどアフリカ西部の天候不順が原因で、国際価格は前年の約4倍に達している。ロッテ「コアラのマーチ」と明治「きのこの山」はそれぞれ今年2回目の値上げが決まった。
コメの価格も上がっており、サトウ食品は「サトウのごはん」で知られるパックご飯全64品を12月から値上げする。
10月には包装資材の値上がりなどから大手飲料メーカー各社がペットボトル入りのお茶や水の価格を引き上げる。帝国データバンクによると10月の値上げは今年最多で、年間では1万3千品目近くが予想されるという。21年秋に食用油や小麦の値上がりで本格化した価格転嫁の動きは長期化している。
形状工夫
メーカーも原料や形状で工夫する。せんべいなどを手がける亀田製菓は国産米の価格を考慮し、9月から看板商品「ハッピーターン」などで米国産米の比率を増やした。
ロッテは9月からチョコレート「ガーナ」シリーズの3品をリニューアル。内容量を変えずに厚みを増やした。担当者は「板チョコを丸かじりすると満足感があるとの声を聞いた。同じ値段でもより食べ応えがあるよう意識した」と話す。
転嫁不足
企業の価格転嫁は道半ばだ。帝国データの別の調査では、今年7月時点で飲食料品製造業の価格転嫁率は約46%で、コスト増の半分以上を企業側が負担していることが明らかになった。転嫁が進まずに体力のない企業が淘汰(とうた)される恐れもある。
東京都江東区でコーヒー豆専門店を営む50代の男性は、仕入れ先の問屋のコーヒー豆価格を毎日確認するが高止まりの状況だという。焙煎(ばいせん)するための光熱費も上がっている。「4月に約20%の値上げをしたが、このままでは再値上げが必要だ。客が付いてきてくれるのか」と不安げに話した。