石破茂首相が自治体に配る地方創生の交付金を倍増させると表明したことに、地方側からは歓迎の声も上がる。だが増額によって、どう対策を進め、どのような効果を見込むのか具体像は見えない。政府内でも「倍増ありき」との声が広がる。 (2面に関連)
首相は4日の所信表明演説で、10年前に初代地方創生担当相に就いたことに触れ「これまでの反省と成果を生かし、地方創生2・0として再起動させる」と強調した。各地への支援強化に向け、当初予算ベースで交付金の倍増を目指すとした。
政府関係者は「倍増だけが突然決まった」と漏らす。交付金は例年、当初予算ベースで1千億円を計上。移住促進や子育て支援事業、地域産業振興などに使われてきたが、日本の人口減少や地方からの若者らの流出は続く。
自治体の関係者は「倍増は歓迎だ」と評価。ただ、県庁所在地や政令指定都市でも人口減少に直面する中、別の関係者は「もはやカネを配って解決するような段階ではない」と断じる。
首相は、少子高齢化にも対応するため「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、今後10年間で集中的に取り組む「基本構想」を策定するとも説明。農林水産業や観光産業、地域の文化・芸術の振興を列挙したが、内閣官房幹部は「本部をどういう構成にして、いつ始めるのかすら分からない」と話す。
日本総研の石川智久調査部長は「地方の産業競争力を高める方向性は評価できる」とし、中小企業支援などを進めるべきだと指摘する。一方で「これまでの地方創生は一時的なばらまきが目立った。二の舞いにならないよう、データを基に政策の効果を検証することも重要だ」と注文した。
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地方創生、見えぬ具体像 交付金倍増ありきの声も
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琉球新報朝刊