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カスハラ防止へ指針公表 社員守る姿勢を明確化 小売や外食、対応相次ぐ


カスハラ防止へ指針公表 社員守る姿勢を明確化 小売や外食、対応相次ぐ 東京商工リサーチの企業調査(8月実施)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大手小売りや外食各社が、来店客による店員への理不尽な要求「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に関する対応指針を相次いで公表している。社内向けだったマニュアルなどを外部にも示し、社員を守る姿勢を明確にする狙いがある。人手不足の中で、カスハラが離職の深刻な原因となっているためだ。
 東京都では今月4日、全国初のカスハラ防止条例が成立した。厚生労働省は企業に従業員の保護を義務付けるよう明記した有識者検討会の報告書を受け、関連法案提出を検討するなど、官民ともに対策に乗り出している。
 東京商工リサーチが8月に実施した多業種対象の調査では、全国約5千社のうち7割以上がカスハラ対策を未実施だった。身近な小売店などでの目に見える取り組みが、被害抑止の社会的動きを広げる可能性がある。
 大手コンビニではセブン―イレブン・ジャパンが9月、2022年に策定した社内向け指針の公表に踏み切った。該当する行為を例示し「毅然(きぜん)と対応する」とした。ファミリーマートは10月から各店舗でカスハラ防止ポスターの掲示を始めた。
 百貨店の高島屋は7月、カスハラの基本方針をホームページで公開。牛丼チェーン「松屋」を手がける松屋フーズも9月に公表し、店員にも周知している。いずれも理不尽な要求や暴力、謝罪動画の拡散などをカスハラと定義し、組織的に対応する姿勢を強調した。
 背景にあるのは離職リスクだ。東商リサーチの調査では、過去にカスハラを受けた企業の約13%で休職や退職が発生していた。
 一方で「店員の対応に問題がある例もゼロではなく、客からの声が集まりにくくなる」(外食業界)との懸念から、対応に二の足を踏む企業があるほか、法整備の動きを様子見するケースも目立つ。
 カスハラ カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語「カスタマーハラスメント」の略称。顧客や取引先が過剰な要求をしたり、商品やサービスに不当な言いがかりを付けたりする悪質な行為を指す。従業員に過度な精神的ストレスを感じさせ、通常の業務に支障が出るケースもある。