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女性監査役が浸透 上場企業 外部人材中心、育成鍵に


女性監査役が浸透 上場企業 外部人材中心、育成鍵に 女性役員がいる会社の比率と役員の内訳
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 女性監査役が上場企業に浸透し、新風を吹かせている。40年ほど前に総合職として就職した世代が経営層を担う年齢となり、男性の独占が薄らいで発言権が拡大した。財務状況や人権などの問題を幅広く調査し、改善を求める。現在は弁護士ら外部人材が中心で、生え抜きの育成が一段の女性参画に向けた鍵を握る。

 大きな役割

 井手明子さん(69)はNTTグループに長年勤務し、NTTドコモ子会社の社長を経て2014~20年に持ち株会社監査役を務めた。政権は当時、女性の役員起用を上場企業に促しており、自身の就任は「そのあたりの動きが大きかった」と振り返る。典型的な年功序列だったNTTで、監査役として年上の幹部からヒアリングするのは「非常に緊張した」という。だが「女性がやっているから軽んじられるということは全くない」と強調する。
 現在役員を担当する東北電力では、監査の際に女性幹部がいる営業拠点に積極的に出向いて声を聞く。研修では講師を担い、社員が声を上げにくかった事案を客観的に経営層に伝える。「不正を見つけて直す昔ながらの仕事だけではない」。監査役の果たす役割は大きく、社内事情に精通する生え抜きの女性がもっと育ってほしいと願う。

 70%に急増

 日本監査役協会が監査役を置く上場企業を対象に調べたところ、女性役員がいる会社の比率は20年の49・6%から23年は70・4%に急増した。女性役員の内訳は7割弱が取締役で、残りの3割程度が監査役だ。
 永田亮子さん(61)は男女雇用機会均等法の施行翌年に当たる1987年に総合職として日本たばこ産業(JT)に入社し、監査役まで勤め上げた。途中から女性の社外取締役も加わるようになり「臆せず質問し、議論が活性化した」という。
 今はホンダなどで役員として勤務する。畑違いの分野でも「発言の仕方に気を付けながら、気後れせずに意見を言う」ことを心がけ、職場の風通しの良さを高められるよう努めている。
 日本監査役協会の事務局によると、経営陣が男性ばかりの企業では、女性1人が監査役に就いても意見を正面から聞いてもらえず、発言が通らない事例があるという。
 協会の担当者は、女性役員比率の底上げが重要だと指摘する。弁護士や公認会計士といった専門知識を持つ外部人材に加え、企業内で経験を積んだ女性の登用拡大に期待を寄せる。「監査役としてバランス感覚を培うことで、さらに別の会社で社外役員として経営に関わる資質も磨かれる」とみて支援を続けていく構えだ。