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政府、ラピダス出資検討 半導体工場、株と交換案


政府、ラピダス出資検討 半導体工場、株と交換案 ラピダス出資案のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が、2027年に次世代半導体の量産を目指すラピダスへの出資を検討していることが10日分かった。政府資金で建設した工場と同社株式を交換する案が浮上。時期や金額は今後、経済産業省や財務省で協議する。長期的な視点で経営への関与や監督を強めると同時に、政府の支援姿勢を明確化して民間の投融資の呼び水とする狙い。
 政府は経済成長と安全保障の両面から半導体を戦略物資と位置付けるものの、ラピダスのように生産実績がない企業への出資は異例。
 事業が頓挫した場合は一定の国民負担が生じる可能性もあり、出資は妥当性が問われることになりそうだ。
 政府は現在、次世代半導体の研究開発をラピダスに委託する形を採用。経産省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じ、委託費として総額9200億円を投じると決めた。ラピダスは北海道千歳市に工場を建設中で、25年4月には試作ラインの稼働を計画する。
 委託事業のため、工場は国の資産。ラピダスは試作ラインを含め工場を量産に活用する方針で、最終的に買い取る必要がある。政府は工場の一部について、ラピダスに買い取ってもらう代わりに同社株を取得する「現物出資」と呼ばれる手法を使うことを検討している。
 政府はラピダスの事業計画を審査しているが、株主になることで経営改善を強く促せるようになる。事業が順調に進んでいるかどうかを確認しながら、量産や研究開発への追加支援をすることも想定している。
 政府は過去にも、公共性の観点から民間企業の経営安定や救済を目的に出資した例がある。
 ラピダスに対する民間企業からの出資は計73億円にとどまる。既存株主やメガバンクなどが追加出資に応じる方向だが、量産の実現性や顧客獲得への懸念は強い。量産までに必要と見積もる5兆円の確保には曲折が予想されている。