石破茂首相の経済政策を巡る発言が就任前後でぶれている。衆院選を控え、増税や利上げといった家計や企業の負担増を連想させる従来の主張を抑え、岸田政権の路線を引き継ぐ姿勢を強調していることが背景にある。
政権の経済政策「イシバノミクス」は暗中模索が続き、政権基盤が安定するまで独自色を強めるのは難しそうだ。
「賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現する」。4日の所信表明演説で石破氏が訴えたのは、岸田政権下で6月にまとまった経済財政運営の指針「骨太方針」と同じテーマだった。デフレ脱却を経済政策の最優先課題としたことも踏襲した。
石破氏は9月、株式売却益などの金融所得への課税強化を「実行したい」と明言したものの、今月7日の国会答弁では「現時点で具体的に検討することは考えていない」と説明。就任前に言及した法人税の引き上げ余地についても踏み込んだ発言はなかった。
金融政策に対する考え方も分かりづらい。石破氏は8月出版の著書で、超低金利政策を柱とする安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」について、企業の新陳代謝の遅れといった副作用に懸念を示した。しかし、日銀による利上げ加速が警戒されて株価が大幅下落したことなどを受け、石破氏は10月2日に「個人的には、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と火消しに追われた。
自民党中堅は「持論を封印しないと、裏金問題が注目される選挙戦がさらに苦しくなる」と漏らす。ソニーフィナンシャルグループの渡辺浩志氏は「極端な政策を打ちづらい状況だとの認識が金融市場で広がっている。来夏の参院選も含めて勝利しないと石破カラーは出せないのではないか」と指摘した。
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「イシバノミクス」暗中模索 発言ぶれ、負担感を抑制
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琉球新報朝刊