国内生産量の約9割を占め、食卓に欠かせない北海道産コンブの2024年度生産量が、1962年度の統計開始以来初めて1万トンを割り、8862トンとなる見込みだ。気候変動や生産者不足が影響しているとみられ、約30年で3分の1以下まで落ち込んでおり、北海道などは対策に乗り出す。
見込みは北海道漁業協同組合連合会が発表した。連合会によると、92年度に3万2千トンを超えていたが、2002年度には約2万4千トン、12年度に約1万9千トン、22年度は約1万1千トンだった。
道立総合研究機構中央水産試験場の清水洋平資源増殖部長(53)によると、漁の対象となるのは2年目のコンブ。ただ昨年は道内全域で夏の海水温が高く、胞子が成長できなかったという。
道東部の浜中町の散布(ちりっぷ)漁協は毎年6月から9月、昆布巻きやつくだ煮に使われるナガコンブ漁に取り組む。本年度の生産量は例年の半分程度で、永谷勝総務指導部長(57)は「コンブの代わりに、高水温に適性のある雑海藻が漁場に繁茂してしまった」と嘆く。
流氷が追い打ちになったところも。オホーツク海側の雄武町では昨冬は通常より長く海が覆われ、雄武漁協の担当者は「夏の高水温を生き残っても、氷で根を切られてしまった」とこぼす。7月19日の解禁の翌日、今季の漁を取りやめた。
担い手不足も深刻で、散布漁協ではここ30年ほどで漁師が約2割減った。天日干し、切断などの加工工程までを手がけるなど、負荷は軽くない。
卸売業者らでつくる北海道昆布事業協同組合によると、こうした事態を受け、全道的に取引価格が上昇している。特に道東産は昨年比で2割以上高くなっている。担当者は「店頭価格にも徐々に影響が出る」とみる。
気象庁によると、釧路沖は海水温の上昇が顕著で、100年間で年平均水温は1・66度、高くなった。道総研の清水部長は「今年の夏は昨年より海水温が低く、来季は一定の生産が見込める」としつつ「徐々に海水温が上昇していく傾向は変わらない」と懸念する。
生産量が過去最少になるとの見通しを受け、北海道は8月末、研究機関や水産団体などで構成する「コンブ生産安定対策検討会議」を立ち上げた。25年度に具体的な取り組みを始める。清水部長は「まずは現状をしっかり把握することが必要だ」と話している。
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北海道産コンブ、過去最少 高水温や人手不足影響か
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琉球新報朝刊