厚生労働省は、就職活動中の学生に対する人事担当者らによるセクハラの防止対策を企業に義務付ける検討に入った。学生との面談ルール策定や相談窓口設置を求め、被害の拡大や深刻化を阻止する。来年の通常国会で関連法改正案の提出を目指す。関係者が22日、明らかにした。
職場の従業員が被害を受けるセクハラを巡っては、男女雇用機会均等法で相談窓口設置などが企業に義務付けられている。一方、学生が被害者となる就活セクハラは法律上の対策義務がない。被害を経験した学生が約3割に上るとの調査結果もあり、立場の弱い学生の保護を強化する必要があると判断した。
企業に義務付ける対策は、学生と面談する際のルールを事前に定めるほか、被害の相談窓口設置と利用の周知、被害に対する謝罪対応などとする案がある。学生へのパワハラも防止対策の義務化が必要かどうか検討する。今後、厚労相の諮問機関である労働政策審議会で詰める。
学生は企業が雇用する従業員とは異なるため、就活セクハラの防止は「職場での雇用管理の延長」と位置付ける方針。均等法または労働施策総合推進法を改正し、対策義務化を盛り込む。
厚労省はこのほか、顧客らが従業員に理不尽な要求をする「カスタマーハラスメント」(カスハラ)の対策も、企業に義務付ける方針。
<用語> 就活セクハラ 企業の人事担当者や社員が就職活動中の学生などに行う性的嫌がらせ。性的な冗談やからかい、食事への執拗(しつよう)な誘いなどがある。OB訪問をした学生に対し、酒を飲ませて乱暴して刑事事件に発展するケースもあり社会問題化した。犯罪に至らない事例でも就活での不利益を恐れて泣き寝入りする場合も。企業にとっては、社会的信用を失うリスクとなる。