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東証社員インサイダー疑い 監視委調査 親族が数十万円利益か


東証社員インサイダー疑い 監視委調査 親族が数十万円利益か インサイダー取引疑いの構図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東京証券取引所の社員が業務で知った未公表の企業情報を親族に漏らしたとして、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で、関係先を強制調査したことが23日、関係者への取材で分かった。複数銘柄の情報を親族に伝え、その情報を基に株取引した親族は少なくとも数十万円の利益を得た疑いがある。監視委は東京地検特捜部への告発を視野に、情報漏えいの経緯を詳しく調べる。
 不正な株取引を監視する立場の東証の社員によるインサイダー疑惑は、市場の公正性に対する投資家の信頼を大きく損ねる恐れがある。
 関係者によると、強制調査を受けたのは若手の男性社員で、上場企業が公表する「適時開示」を担当する部署に所属。今年、複数の未公表情報を親族に漏らした疑いが持たれている。株式公開買い付け(TOB)に関する情報が含まれるという。
 親族はその情報を基に株取引をし、少なくとも数十万円の利益を得たとみられる。社員本人は取引していない。
 不審な取引を把握した監視委が9月、社員や親族の自宅など関係先を強制調査した。
 東証を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)は、社員が調査を受けていることを認め「関係者の皆さまに多大なご迷惑とご心配をおかけし、深くおわびする。調査に全面的に協力する」とコメントした。JPXは職員の株取引を原則禁じているが、家族や親族の取引に関する規制はない。
 職務上、企業の重要な情報を扱う関係者による不正では、今月、金融庁に出向中の裁判官によるインサイダー疑惑も発覚。東証の社員と同じように監視委の強制調査を受けた。
 東証は国内最大の取引所。時価総額の規模などに応じてプライム、スタンダード、グロースに分かれ、計約4千社が上場している。

 インサイダー取引 株式公開買い付け(TOB)や合併、買収といった上場企業の「重要事実」を公表前に入手し、その情報に基づき株を売買する行為。金融商品取引法で禁じられている。同法は、第三者に利益を得させる目的で重要事実を伝える「情報伝達」や、株取引を勧める「取引推奨」も禁止している。常習性が認められる場合や、利得が高額に上る場合は行政処分ではなく、刑事告発の対象になる。