地下鉄を運営する東京メトロが東京証券取引所の最上位プライム市場に23日上場した。初値は1株1630円で、売り出し価格の1200円を35・8%上回った。取引初日は1739円で終え、時価総額は1兆103億円となった。2018年のソフトバンク以来約6年ぶりの大型上場案件となった。
上場に伴い、発行済み株式の保有割合は国が26・71%、東京都が23・29%となり、いずれも半減した。国の売却分は1800億円余りで、東日本大震災の復興財源を賄うため発行した復興債の償還費用に充てる。
東京メトロの時価総額は、東急や西武ホールディングス(HD)、関西が地盤の阪急阪神HDと並ぶ水準となった。
取引終了後に記者会見した山村明義社長は「持続的な企業価値向上に取り組み、多くのステークホルダー(利害関係者)に支持される企業グループを目指す」と述べた。
東京メトロは24年3月期の営業利益が763億円。売上高に占める割合(営業利益率)は19・6%と、首都圏の他の私鉄を大きく上回る。営業利益の8割を運輸事業が占め、不動産など事業の多角化を進める。
この日は取引開始から東京メトロ株に買い注文が集中し、午前10時過ぎまで初値が付かない状態が続いた。SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「収益に安定性があり、新たな投資対象として個人投資家からの注目が高い」と話した。
国と東京都は当面、残る計50%の株式の保有を続け、東京メトロが計画する2路線での延伸を支援する。
東京メトロ 正式名称は「東京地下鉄」で、2004年4月に発足した。前身は帝都高速度交通営団。銀座線、丸ノ内線など9路線180駅を擁し、総路線距離は計195キロ。首都圏のJRや私鉄と相互に乗り入れており、1日の平均輸送人員数は約650万人に上る。