生成人工知能(AI)が日本の産業に与えるプラスの効果は、2030年代に年21兆円規模になり得るとの試算を、三菱総合研究所が19日までにまとめた。現状の2兆4千億円から、およそ9倍に膨らむ。AIを業務で使う上での社内ルールなどを整え、AIの信頼性を高めるほど活用が進み、効果が大きくなるとみた。
金額はAIによる仕事の生産性向上で得られるメリット「付加価値」に当たる。既存事業の人材を、新たな市場の開拓に充てることなどを想定する。試算の対象は「製造」「情報通信」「卸売り・小売り」「医療・福祉」「教育・学習支援」の5産業で、経営者や従業員ら約1万人へのアンケートと統計を基に分析した。
アンケートでは、全体の50%超が生成AIを業務で使う意向を持っているものの、現状で活用しているのは14.6%にとどまった。三菱総研は法制度や社内ルールといった利用環境の不十分さに加え、情報の正確さなど信頼性への懸念が背景にあると指摘。これらを十分に整備、確保できれば産業効果は21兆3千億円に達するとの見方を示した。
産業別にみると、製造が現状の9600億円から8兆100億円に増え、最大となる。医療・福祉は5400億円から5兆4900億円に、卸売り・小売りは4700億円から4兆6200億円に伸びる。情報通信は3500億円から2兆3700億円に、教育・学習支援は880億円から7780億円に拡大する。
また三菱総研は、生成AIへの不安を払拭するためには「信頼性の可視化」が必要だと訴えた。AIの利用企業や認証機関などが信頼性を評価し、その結果を見えるようにする仕組みを例に挙げた。
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生成AI、産業効果21兆円 30年代 信頼性向上、ルール整備で
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琉球新報朝刊