農林水産省が30日公表した新米(2024年産)の需給見通しは、生産量が前年から22万トン増の683万トンで、25年6月まで1年間の需要量の674万トンを上回った。民間在庫量も回復する見込み。高温被害が出た23年産に比べて流通量が安定し、今夏に全国で相次いだ品薄への懸念は緩和しそうだ。ただ、光熱費や肥料代など生産コストの増加を反映して、店頭価格の高止まりは続く可能性がある。
23年産の低調を踏まえ、各産地で主食用の作付けが増えた。流通量を左右する1等米比率は直近の9月末時点で77・3%と、23年産の同時期の59・6%から大きく改善している。だが集荷競争も激しく、店頭価格は下がりにくいとの声もある。
需要面では、最近は麺類やパンと比べ価格上昇が遅かったことや、インバウンド(訪日客)急増で一時的に伸びたが、農水省は長期的な減少傾向は変わらないとみる。
25年の生産量予測は横ばいの683万トン。これに対し、25年7月から1年間の需要量は高値の影響もあって11万トン減の663万トンと見通す。
民間在庫量は今年6月末に153万トンで過去最低だったが、25年6月末には162万トンに戻る。26年6月末にはさらに20万トン増える。
農水省が30日に開いた専門家会議では、急な需要増や価格上昇の反動で「需要の下振れリスクは高い」との意見もあり、需給見通しは見直される可能性もある。
農水省は今夏の品薄に関する分析も発表。8月の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を受けた買いだめ需要などで供給が追いつかなかったと総括した。農水省は当初「需給は逼迫(ひっぱく)していない」と繰り返していたが、今回の分析では「店頭からコメが消えれば、消費者は不安に感じる」と問題点を認め、今後は消費者に分かりやすい情報発信に努めるとした。
有料
新米生産 需要上回る 農水省見通し 前年比22万トン増 店頭価格、高止まりか
この記事を書いた人
琉球新報朝刊