聴覚障がいがある沖縄女子短期大学2年生の中村優里さん(23)が来年3月、保育士の資格を取得して卒業する予定で、残りの単位取得に励んでいる。高校生の時、障がいを理由に「無理だ」と否定された夢だったが、友人が手話を覚えて交流したり教員が障がいの有無によらない授業づくりをしたりして、夢の実現に向かうことができた。中村さんは「この学校じゃなきゃできなかったと思う」と笑顔を見せ、友人らに手話で感謝を伝えた。
中村さんは生まれつき聴覚に障がいがあり、手話でコミュニケーションを取る。小中学校は普通校の難聴学級に通った。高校は沖縄ろう学校に進学、子ども好きが高じて保育士になりたいと考えた。しかし高1の時、近しい人から「無理だ」と言われ傷ついた。高3で妹が生まれたことをきっかけに、改めて保育士になることを決意。高校卒業後は名護市の保育園で3年間、保育補助の仕事に就いた。
2022年4月、保育士の資格を取得するため沖縄女子短期大学に入学した。授業の多くは教師の声を自動で文字化する機器を使用している。
その一方で手話を覚える教員が増えていった。授業中の説明を手話でする教員もいる。音楽の授業では、教員が中村さんの肩をたたいて拍子を伝えた。中村さんは体で拍子を感じながら楽譜を読み、ピアノで童謡を弾くことができるようになった。
学生生活を最も近くで支え続けたのは同校で出会った友人の滿名未希さん(19)だ。滿名さんは手話を覚えて仲良くなり、周囲の友人との会話のつなぎ役になることも多い。
今年9月には、沖縄ろう学校幼稚部で実習をした。3~5歳の児童とは手話で会話できたが、手話ができない教員がいることに違和感を感じた。「手話ができる教員だけを学校に赴任させることが難しいのだと思う。筆談など別の方法はあるが、気持ちをすぐ伝えづらい」。中村さんは実習を通して、沖縄ろう学校に勤務したい気持ちが芽生えた。「手話ができない先生に手話を教えたい。子どもと先生をつなぎたい」
障がい者と健常者では受けられる教育に差があるとも感じていて、今後は小学校教諭の免許取得を目指すことも考えている。「みんなが同じ教育を受けられるようにしたい」と、新たな目標に向かって勉強を続けている。
(嘉数陽)