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「最強」対決本、小学生に人気 人とつながるきっかけに 累計400万部超「最強王図鑑」シリーズ


「最強」対決本、小学生に人気 人とつながるきっかけに 累計400万部超「最強王図鑑」シリーズ 「最強王図鑑」シリーズと目黒哲也さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 トラとライオンはどちらが強いのか。サメとシャチが戦えば―。「最強」を巡る議論は、今も昔も子どもたちの胸を熱くする。迫力あるイラストと実況風の文章でバトルシーンを描き、小学生たちから圧倒的に支持されているのが、Gakkenの児童書「最強王図鑑」シリーズだ。
 動物や恐竜、空想上の生き物がトーナメント方式で対戦するのが特徴。シリーズ累計発行部数は400万部を超え、2月に発表された第4回「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」でも「ドラゴン最強王図鑑」が8位に入った。
 「親御さんや先生からは嫌われていると思っていたので驚きました」。「総選挙」結果発表会で、担当編集者の目黒哲也さんが会場の笑いを誘った。どちらが勝つか話すうちにけんかに発展することもあり、持ち込み禁止の学校も多いことを踏まえての発言だ。
 「総選挙」アンバサダーのお笑い芸人、又吉直樹さんも「けんかになる本」に反応。読み方にもついつい「正解」を求めがちな大人に対し、読んだ本について自分の意見を持ち、「けんか」になるまでの子どもたちの熱量に感銘を受けた様子だった。「いろんな人がいろんな読み方、楽しみ方をしていくことで、その本はさらに魅力的になっていく」と喜んだ。
 「どっちが強いは、子どもの根源的な興味」と目黒さん。自身も子どもの時に夢中になった「猛獣もし戦わば」(小原秀雄著)をヒントに、動物同士の戦いを「ビジュアル的に再現できれば面白いのでは」と考えた。
 「戦いを楽しみながら知識を得てほしい。勝ちに至った過程を重視しています」。生き物の能力を示すレーダーチャートなど子どもが喜ぶ演出を盛り込みつつ、勝負の場面では科学的知見を基に納得感のある描写を心がける。例えば、シベリアトラ対ライオンでは、急所の首がたてがみで保護され、群れを守るために雄同士の争いに慣れているライオンに分があると結論づけた。それでも編集部には「推し」の敗北に納得できない子どもの親から「説明してほしい」と電話がかかってくるという。
 そんな子どもたちの「好き」の表明を目黒さんは肯定的に受け止める。「どうして強いと思ったのか、なぜそれが好きなのかを説明することは、自分を知ることにつながる」からだ。
 オンラインで会話しながらゲームを楽しむ今の子どもたちの姿などを見るうち、個人的な活動だと捉えていた読書に対する考えが少し変わってきた。「共通のテーマについて話したり、集まったりするきっかけや場が求められている気がする。本にはそうした人をつなげる役割があり、この本もそうなってほしい」