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生成AI 授業実践広がる 全国52モデル校 文科省、指針改定へ


生成AI 授業実践広がる 全国52モデル校 文科省、指針改定へ 生成AIを使った英語の授業で生徒を見守る成田崚央教諭(左)=2月上旬、茨城県つくば市立学園の森義務教育学校
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 対話型人工知能(AI)「チャットGPT」で知られる生成AIの学校での利用が徐々に広がっている。教師は考える力を奪うといった問題点にも注意しながら、学ぶ楽しさや新たな視点に気付くためのツールとして役立てている。文部科学省は全国52のモデル校で蓄積した課題や効果を踏まえ、学校向けの指針を改定する方針だ。
 2月上旬、茨城県つくば市立学園の森義務教育学校。中学2年に当たる8年生の生徒がマイク付きのヘッドホンを着け、パソコン端末の生成AIを相手に英語のディベートに取り組んでいた。
 ある女子生徒の議題は「アウトドア派かインドア派か」。「ハイキングはきついけれど、良い気持ちになるよ」と話すAIに対し、生徒は「でもインドアゲームも…」と言葉を返した。
 生成AIは、例えば「10歳の米国人で単語数は10語以内」といった具合に、話すスピードや長さ、単語の難易度を調整できる。AIが相手なら失敗を恐れずいつでも練習できるとして、日本の英語教育にとって課題のスピーキング力向上に効果的だとの声もある。
 授業後、岩崎莉子さん(14)は「自分に合ったレベルで上達できる」。一方、別の生徒は「表情やジェスチャーで理解してくれない」と、人との対話の良さを再認識した様子だった。授業ではAIが生徒の発音を認識しなかったり、会話がかみ合わなかったりする場面もあった。成田崚央教諭(26)は、活用への手応えを口にしつつ「改善の余地はかなりある」と話した。
 生成AIには、考える力を奪うとの懸念や、回答に間違いが含まれているなどの問題点も指摘されている。
 「正解を求めるのでなく、視点を増やすことに効果がある」と語るのは大阪府枚方市立長尾中の長谷尾健司教諭(34)。中3社会の授業では、住みやすい街づくりを検討するために、外国人や高齢者らさまざまな立場の意見を生成AIに尋ねた。生徒は回答を参考に「ひとり親世帯の親が仕事終わりに子どもを迎えに行きやすいよう、駅近くに子育て施設を造る」などと提言。長谷尾教諭は「多様な考えに気付くことで、グループの議論が深まった」とする。
 熊本市立北部中は、日本が日清・日露戦争に向かう歴史の流れを捉えるために活用。生徒は戦争に進む要因となった「殖産興業」や「教育勅語」など九つの事柄を自分で順位付けした上で、生成AIや同級生の意見も聞いて考えを整理した。生徒からは「勉強の幅が広がる」「間違った情報が多い気がする」などの声が上がった。
 文科省は昨年7月公表の指針で、生成AIの短所と長所を列挙し「限定的な利用から始めるのが適切」との考え方を示している。今後はモデル校での実践結果などを受けて、見直しを進める。