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「代理返還制度」に注目 久米忠史(奨学金アドバイザー まなびシード代表取締役) <未来へいっぽにほ>


「代理返還制度」に注目 久米忠史(奨学金アドバイザー まなびシード代表取締役) <未来へいっぽにほ> 久米忠史
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 現在、多くの企業の間で日本学生支援機構(JASSO)の「代理返還制度」が注目されている。これは社員の奨学金返済を企業が支援するもので、2021年度に始まった。開始初年度65社だった参加企業が今では2千社を超えている。その背景には、学生側の売り手市場が続く就職環境が影響していると想像できる。

 実は10年ほど前から、一部の企業で社員の給与に上乗せして奨学金の返済支援に取り組む動きがあった。その場合、当該社員の所得税や社会保険料に影響が出るため、他の社員との間に不公平が生じる。一方、JASSOの代理返還制度は、企業がJASSOに直接送金する形なので、それらの課題がクリアされる。また、返還金が法人税の控除対象になるなど企業側のメリットもある。

 企業によって支援内容はさまざまだ。松屋フーズホールディングス(東京都)は、奨学金の返済を1人当たり最大200万円支援する制度の運用を今年1月に開始した。県内でもいくつかの企業が代理返還制度に参加している。IT関連企業のビーンズラボ(那覇市)は、月額1万円を上限に返済支援を行っている。そのほか、設備工事業の國和設備工業(那覇市)は、社員の返済月額の半額を完済まで支援するとしている。ほかにも同制度に参加している県内企業があり、今後のさらなる広がりが期待される。

 多くの専門家が指摘しているが、就職活動では学生優位の売り手市場が当面続くことが予想される。希望業種の中で、奨学金の返済支援への取り組みを企業選択の一つの要素として考えてもいいのではないか。

久米忠史 くめ・ただし

 奨学金アドバイザー。まなびシード代表取締役。2004年から沖縄の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが好評で、現在は全国各地で講演を行う。1968年生まれ、和歌山県出身。