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ポップス 海外でライブ行う動きも<2023年県内年末回顧>


ポップス 海外でライブ行う動きも<2023年県内年末回顧> 台北のライブハウス「リボルバー」で開催された沖縄出身のHOMEのライブ=11月、台湾
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 5月、ほぼ3年にわたってエンタメ業界を翻弄(ほんろう)してきた新型コロナウイルスによるイベント開催制限の規制が廃止された。春先から緩和のムードは漂っていたものの、規制廃止により、夏以降は音楽業界にも活気が戻り、イベントやコンサートの本数は大きく増加した。

 HY(3月)やMONGOL800(11月)などのアーティストがホスト役を務めるフェスや、宮古島でのロックフェスティバル(10月)などは動員も好調だった。多くの音楽ファンがこうした大型イベントを待ち望んでいたことが見て取れた。

 躍進著しいHIPHOPのシーンからは、Awich(エーウィッチ)を中心に新しい世代のアーティストが活躍した。3月にはAwichのキュレーションで沖縄のHIPHOPアーティストのコンピレーションアルバムがデジタルリリースされた。そこに収録されたSugLawd Familiar(サグラダ・ファミリア)の「Longiness」は、もともとのバイラルヒット(ストリーミング再生回数で売れた曲)をさらに押し上げる形となった。コザのアーティストRude―αは、新たに結成した4ピース・バンド、Bubble Baby(バブルベイビー)で全国ツアーを行うなど新機軸を打ち出した。

 ベテラン勢では、ハードロックバンド「紫MURASAKI」が、反戦への意思を明確に表した約7年ぶりのアルバム「TIMELESS」を発表。「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演や、日比谷野外音楽堂での、BOWWOWやCharとのライブなどを開催した。さらに来年7月には、スウェーデンの「TIME TO ROCK FESTIVAL」への出演が決まるなど、大きく再評価された。

 古謝美佐子は15年ぶりのアルバム「平和星☆願い歌」を発表。このアルバムに通底するテーマも、紫と同様、反戦と平和である。ジャンルは異なるものの、2組のベテランアーティストが、この時期に改めて音楽を通して平和への想いを発信することは、戦争により日常が脅かされる、世界的な状況に反応してのことで、決して偶然ではないはずだ。

 11月、台北のライブハウスで、沖縄出身のHOMEとTOSH、2組のアーティストのライブを聴いた。沖縄から海外に出てライブを行う動きは、インディーズ・アーティストの間でも急速に広がっている。

 音源の流通形態がストリーミングに移行して、音源を世界の隅々まで同時に配信できるようになった。マーケットが世界に広がったことで、沖縄からも海外に目を向けるアーティストが増えるのは自然なことだ。

 この秋、HOMEとTOSHはアジア各地でライブを行った。その音楽は、どこの街でも、地元の音楽ファンにしっかりと響いていた。こうした動きは、これから多くのアーティストにとっての新たな選択肢になるはずである。

 (野田隆司、ライター)