〈18〉ウマ?シマウマ? まぶたの怖いできもの


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 「ひづめの音を聞いたらシマウマを探すな! ウマを探せ!」

 医師として、ある症状や検査結果に対して、いきなり珍しい病気から考えるのではなく、まずは一般的な病気を思い浮かべて診療に当たりましょう、という意味の格言です。自宅で医療ものの漫画を読んでいた際に目にしました。この言葉を見た時に、ふと頭をよぎった分野が眼瞼(まぶた)の疾患です。

 眼科医にとって、まぶたの「ものもらい」「ほくろ」「いぼ」は1日1度は目にする一般的な疾患、つまりウマです。ところが、その中に決して見過ごせないシマウマ(眼瞼悪性腫瘍)が潜んでいる可能性がある、というお話をさせていただきます。

 眼(め)の悪性腫瘍は症例が少なく、厚生労働省が定めた人口10万人当たり年間発生率6例未満の“希少がん”に当てはまります。珍しい疾患なので、まぶたのできものすべてで悪性腫瘍の可能性を考えて、大きく切り取ってしまうことはやり過ぎと言えます。

 ただし、やっかいなのは悪性腫瘍は命に関わり見過ごすことができない一方で、ものもらいやほくろに似ていて区別が難しいものがある点です。悪性腫瘍は、まつ毛が抜け落ちたり、異常に太い血管が入り込んでいたり、悪性をにおわせる顔を持っています。しかしそのような特徴だけを根拠に、悪性かどうか診断を下すことは困難です。

 高齢の方で、短期間のうちにどんどん大きくなる、切除しても再発を繰り返すといった、あやしいできものは顕微鏡で詳しく検査をする必要があります。

 まぶたのできものの大半は恐れる必要のないものです。悪性腫瘍なんて「まさかやー」です。しかし「高齢」「大きくなっている」「繰り返している」といったキーワードがそろっている場合は「ひょっとしてー」を考え、眼科医へのご相談をお勧めいたします。また時間をおいて経過をみることも非常に重要です。一度検査を受けた後も、どんどん大きくなる場合は繰り返し受診をお願いいたします。

 (江夏亮 琉大医学部附属病院 眼科)