米ミサイル計画から見えるロシアの思惑とは…作家・元外務省主任分析官の佐藤優が解説


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(佐藤優 作家・元外務省主任分析官)

 米ロ関係は非常に緊張しており、中距離ミサイルの日本への配備の可能性があるというロシア側の分析だが、信ぴょう性に疑いがある。米国の考えを慎重に見極めないといけない。配備決定や発表のタイミングはまだ早い。意思決定はトランプ米大統領だが、現在、その余裕はないはずだ。米国防総省の一部の人が考えているのではないか。

 米ロ間は専門家同士が協議している。その中で出た話で決定とはまだ言えない。ロシアはそこを分かっていて、日本、特に沖縄に情報を流し、激しく反応することを見越している。それによって米国の中距離ミサイル極東配備に対する警戒心を高め、日米離間を狙うロシア側の意図がある。

 他方、原理的に配備の可能性はある。中国は建国70年の軍事パレードで新型ミサイルを披露した。米側の本音は中距離ミサイルは中国に向いているということだ。地理的条件から沖縄への配置が適切となる。日本政府は辺野古の基地は必要で、先島地方にも基地が必要という議論を誘発する。極めて危険な動きだ。

 日本政府はこの話はふたをしたがるので、県はプロジェクトチームを立ち上げて独自で情報収集すべきだ。日米離間は外交ゲームだ。ロシア側の意図に乗せられているという議論も出るだろうが、沖縄は沖縄の利益だけ考えればいい。

 基地問題に関する万国津梁会議でも分析し、知事や県民に提言すべきだ。報道だけで終わらせず、県のレベルで受け止めることが必要だ。
(佐藤優 作家・元外務省主任分析官)