那覇空港旅客ターミナル3階出発ロビーにある一般車両の乗降場所。駐車中のレンタカーの隣に、かりゆしウエアの男性とスーツケースを抱えた観光客が立っていた。観光客は男性が示した資料や車両の状態を確認し、最後に現金を支払った。空港から走り去るレンタカーを見送った男性は「レンタカーの引き渡しをやっていた。この場所で営業行為が禁止されているのは知っている」と語り、現場を後にした。
那覇空港3階の乗降場所は、空港利用者の利便性向上や渋滞防止などの目的から駐車禁止エリアに指定されている。レンタカーの引き渡しや返却など営業行為も禁止されており、那覇空港ビルディング(NABCO)など関係機関が注意や指導を行っている。
多くのレンタカー業者は送迎バスで空港から近隣の事業所まで利用者を送迎しているが、零細の一部の業者が違反行為を繰り返している。警察と協力して取り締まりを強化しても、すぐに違反業者が出てくるため、関係者は「いたちごっこだ」と頭を抱える。
違反行為である空港での引き渡しを行うレンタカー業者の男性は「空港以外の場所まで移動すると、渋滞にはまって時間がかかる。沖縄旅行のイメージも悪くなる」と悪びれずに語る。
高い知名度や宣伝費で多くの利用者を獲得できる大手企業と異なり、中小零細の事業者は空港到着後すぐにレンタカーを借りられる“利便性”を前面にして差別化を図るしかないという。男性は「空港引き渡しは観光客のニーズもある。利用者に感謝されることの方が多い」と言い切る。
沖縄を訪れる観光客の増加に伴い県内のレンタカー業者も急増し、県レンタカー協会に加盟しない新規参入業者が違反を続けているという。県協会の與古田思好専務理事は「駐車禁止エリアにレンタカーを駐車して、営業をすることが大きな問題だ」と強調する。
空港での引き渡し行為は、ここ2~3年で顕著に見受けられるようになった。協会に加盟しない事業者には、禁止行為の周知や注意を行き渡らせることは困難だ。與古田氏は「ホテルやダイビングの業者がレンタカー業をやっているケースもあり、実態は見えにくい」と説明する。
那覇空港では、同じく営業行為が禁止されている立体駐車場内でもレンタカーの引き渡しが横行しており、NABCOの東川平靖専務は「ルールが完全に無視されている」と嘆く。営業行為によって周辺道路が混雑したり、駐車場の利用ができなかったりするなど、一般客に悪影響が出ている状況を懸念する。
利用客の増加でターミナルや周辺道路の混雑が慢性化する那覇空港は、空港に到着してレンタカーを借りるまでに時間を要することが観光客のストレスとなっている。一部のレンタカー業者による抜け駆け的な違反行為が空港内で横行し、混雑がさらに助長される悪循環が生じている。
東川平氏は「解決のために営業行為に対して罰則を設ける必要があるのか。さまざまな対策を検討する必要がある」と言い、課題解決に向けた取り組みを今後も進めることを強調した。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)