【ロサンゼルス】日系人文学 変遷を考察 水野氏が再調査


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
北米沖縄県人会図書室で研究論文に取り組む水野真理子富山大准教授

 国立富山大准教授の水野真理子さん(43)がこのほど北米沖縄県人会図書室を訪れ、移民文学者の山城正雄さんら「日系アメリカ人の文学活動の歴史的変遷」について研究分野の再調査を行った。水野さんは富山県生まれ、新潟大卒、富山大修士課程修了後、会社勤めを経て京都大博士課程を修了した。

 博士課程の論文は、1880年代から北米に移民や勉学のために渡米した日本人とその子孫が、米国においてどのような文学活動を行ってきたか、その変遷を取り上げた。日系人の文学活動は日本、米国や在米日本人社会の関係を映し出し、太平洋戦争を挟んだ複雑な背景の中でどのような立場に置かれ、その状況に向き合ったのかを文学活動を通して考察している。

 水野さんが日系アメリカ文学に興味を持ち始めたきっかけは、大正・昭和の富山県出身の小説家、ジャーナリストで郷土史研究家・翁久允の研究だったという。1907年に渡米、シアトルの邦字紙などに小説を発表した後、「週刊朝日」の編集部長となった。その研究に取り組むうちに、山城正雄や加川文一など南カリフォルニアの日系アメリカ人の文学活動と巡り合った。

 羅府新報に日系文学関係者らが追悼リレー連載「山城正雄さんの思い出」を書いており、水野さんも「山城さんの詩―哀しみを込めて」と題して執筆。詩人としての哀愁に満ちた山城正雄論を導いている。

(当銘貞夫通信員)