知事の翁長雄志は2015年5月17日、那覇市の沖縄セルラースタジアムで開かれた辺野古新基地建設断念を求める県民大会に登壇した。「うちなーんちゅ、うしぇーてーないびらんどー(沖縄人をないがしろにしてはいけませんよ)」。壇上から雄志が叫ぶと、地響きのような拍手と歓声が沸き起こった。
雄志は6月に訪米し、米国防予算に大きな権限を持つ議会上院軍事委員会委員長のマケインらと会談した。雄志は県民の多数が新基地建設に反対していることを訴えたが、マケインは「辺野古を支持する」と重ねて表明した。
15年9月、前知事の仲井真弘多による埋め立て承認を取り消した雄志は、スイスに向かった。ジュネーブで開かれる国連人権理事会で演説するためだ。21日の同理事会総会で、雄志は「沖縄の人々の自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。
沖縄に米軍専用施設の7割以上が集中している状況を説明し、基地が建設された経緯を「沖縄が自ら望んで土地を提供したものではない」と述べた。
その上で「米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続けている」として、日本政府を「自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのか」と批判した。
さらに県知事選や国政選挙で、新基地反対の民意が示されたことを挙げて「あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟だ」と強調した。
国連NGO市民外交センターの発言枠を譲り受けた約2分間の演説で、日本の都道府県知事としては初めてだった。沖縄を巡る問題を安全保障や国際政治の観点だけでなく、人権問題として考えるよう訴えた。
雄志は国連ビル内で開かれたシンポジウムにも登壇し、沖縄の歴史を1879年の琉球併合(「琉球処分」)にまでさかのぼって発言した。「良き日本人になるよう頑張り、日本語も覚えたが、待ち受けていたのがあの大戦だった。戦争が終わって7年。今度は日本が独立することと引き換えに琉球・沖縄を米軍の施政権下に差し出した」。
シンポジウムに雄志と共に登壇したメンバーに、琉球大学教授で島ぐるみ会議国連部会長の島袋純もいた。島袋は沖縄が日本国憲法の「適用除外」にされていると強調した。その上で「知事がここに来て話をするのは、日本の法体系では救済される展望が見えないからだ。政府はさまざまな特別法でそれを正当化し、沖縄の人を処罰する手を使っている」と述べ、国際法の観点から解決を求めた。
(敬称略)
(宮城隆尋)