芸能・文化

『八重山民話の世界観』 島民の世界観など探求

『八重山民話の世界観』石垣繁著 榕樹書林・1100円

 著者は、かつて八重山文化研究会の会長であり、現在は顧問を務めるなど、長年にわたって八重山文化研究会の重鎮である。本書は、著者がこれまで研究誌などに発表してきた論文3本と新たに書き下ろした論文1本、それに「あとがき」から成る。

 第一章では、近世期に人頭税の重圧から逃れて、理想郷を求めて南の海上へ旅立ったという波照間島民の「パイパティロー」説話を取り上げる。著者は、この説話が史書「八重山島年来記」(1648年)に記された「八重山・波照間島で起きた島人の脱島事件」に由来することを指摘し、一つの歴史的事件がなぜ島人の間で説話化されていったのか、その背後に島人の「ニライ・カナイ」信仰(他界観)の存在を思い描く。

 第二章では、与那国島比川村に伝わる銘苅口説を取り上げる。いわゆる天人女房譚(たん)である。これに類する説話は、琉球列島はもちろん全国的に分布するが、著者によれば、比川では「按司」「祝女」の職掌起源を語る内容であり、琉球文化圏におけるオナリ神信仰の系譜につながるという。

 第三章では、宮古の近世期の英雄・金志川金盛に関する民話や歌謡を取り上げる。金盛は、与那国の鬼虎征討の後、宮古の首長・仲宗根豊見親に殺されたとの伝承がある。しかし、著者はその金盛に関する民話や歌謡が八重山の島々に広範に分布することに着目し、それらの地を踏査した結果、「金志川金盛の終焉(しゅうえん)の地は新城島・上地である」との結論に至る。仲宗根豊見親の目を逃れて、新城島・上地で生き延びたというわけである。

 第四章は、著者が採集した「白保の民話」を手掛かりに、白保村の創設や明和の大津波後の再建について書き下ろした論考である。そこには地元出身者ならではの知見が伺える。

 本書は、民話を通して島人の生活とその世界観を探究したものであり、八重山の民俗社会をより深く理解するための一冊と言えよう。多くの方々に、ぜひ一読をお勧めしたいと思う。

 (本永清・宮古の自然と文化を考える会)

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 いしがき・しげる 1937年石垣市白保生まれ。八重山地区の小・中・高校で教職に就き、定年退職。69年に八重山郷土文化研究会を設立。2007年に石垣市市政功労者(文化部門)表彰。主な著書に「八重山諸島の稲作儀礼と民俗」(南山舎)など。

 

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