〈21〉動脈硬化 足にも注意 糖尿病、喫煙は高リスク


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 動脈硬化によって発生する脳卒中や心臓病は、がんと並んで最も予防したい病気の代表です。しかし動脈硬化を来すのは脳や心臓ばかりではありません。足の血管が動脈硬化で閉塞(へいそく)し、さまざまな症状をもたらす「閉塞性動脈硬化症(PAD)」をご存じですか? これがなかなか手ごわいのです。

 代表的な症状は「間欠性跛行(はこう)」といい、数百メートル歩くうちに足どりが極端に重くなり、立ち止まってしまいます。しばらく休むと症状は消えますが、度重なる場合は足の血流障害を疑うべきです。

 足先の脈拍チェックや、腕と足首血圧の同時測定(ABI検査)で比較的容易に診断できます。中には症状の乏しい方もいます。運動負荷試験を行うことで、血流障害と、これに伴う症状を再確認することができます。

 治療には、重症度や閉塞部位に応じて薬剤、カテーテル治療または手術、運動療法を使い分けます。糖尿病や高血圧といった原疾患の治療、そして禁煙が必要なのは言うまでもありません。

 さらに大切なのは「その後」です。世界44カ国、6万8千例を追跡したREACH研究では、PAD患者の50%が冠動脈疾患を、25%が脳血管疾患を合併していると報告されました。またPAD患者は同年齢層と比較しても明らかに短命であり、5年以内に40%の方が亡くなるとも言われます。これは大腸がんに匹敵する死亡率です。

 死亡原因の多くが心臓病や脳卒中であることも、多くの研究で明らかになっています。つまりPADに罹患(りかん)した人は「動脈硬化があまりに重症なため、心臓や脳疾患で命を落とす可能性が高い」のです。

 下肢の血管に起きるPADは動脈硬化の最重症型とも言えますが、適切な治療を行うことで下肢切断を回避できた人、歩行能力が改善した人、健康な日々を謳歌(おうか)している人も多くおられます。いつまでも歩ける足を保ちつつ、心臓や脳も大切にする生活を心掛けたいですね。

 (前田武俊、大浜第一病院心臓血管センター 循環器内科)