シリアから米軍を撤退させるとのトランプ大統領の決定を受け、米議会が混乱する中、玉城デニー知事は15~19日にワシントンを訪れた。米軍普天間飛行場への関心が薄まっているとされるワシントンで、米政府の政策決定などに影響力を持つヘリテージ財団のクリングナー上級研究員に普天間問題などについて聞いた。
―トランプ大統領がシリアから米軍を撤退させ、ワシントンで論争になった。
「同盟国との信頼に基づく米国の外交にとって非常に破壊的な決定で、共和党員ですら驚き、怒っている。実務者や専門家、議会の指摘や要望を聞き入れることなく独断で決めた」
―「シリアとトルコの国境問題には関わらない」というのがトランプ大統領の姿勢だが、領有権などを巡り日本と周辺国に緊張が走った場合、在沖米軍を撤退させる可能性はあるか。
「そうならないことを願っている。米国が二つの世界大戦で学んだことは、孤立主義は機能しないということだ。そのため米国は日韓両国と同盟を結び、両国に米軍を駐留させている。地域の安全に寄与することが米国の利益につながる、というのが米国内の伝統的な保守の考え方だ。準備もせず米軍を引き揚げることは東アジア地域を不安定な状態に陥らせる」
―沖縄では米軍を縮小すべきだとの声が根強い。その中でも特に辺野古新基地建設の見直しを求める声が多く、玉城知事もワシントンで反対を訴えた。
「かつてワシントンでは日米関係と言えば普天間問題が必ず議論され、重大な関心事だった。だが、安倍政権が埋め立て工事に着手してから、ゆっくりではあるが着実に移設計画が進められているため、ここ何年かは普天間問題はほとんど注目されていない。ワシントンで日本に携わる人が現在注目しているのは北朝鮮や中国との関連で、普天間問題は既に決着済みだとしてワシントンでほとんど話題になることはない」
―上院軍事委員会が2020会計年度の国防権限法案で在沖海兵隊の分散配備の見直しを国防総省に要求する条項を盛り込んだ。
「これまで何年もの間、米軍再編計画に対する見直しや調査の要求が議会から出されてきたが、結論はいつも同じだ。移設計画の中止や県外への訓練移転など、沖縄の要望に応えるため、あらゆる方策が検討されてきた。だが、いずれも防衛能力や抑止力を維持することが困難になるとして現行計画に戻っており、今回も同じ結果になるだろう」
―民主主義の国として、県民投票で示された民意をなぜ米国は受け入れないのか。
「米国の外交政策は国家間で実施される。すなわち、沖縄は一都道府県であって、国家ではない。外交や防衛、経済などに関する連携は日本政府との間で実施されるものだ。普天間問題をはじめ、沖縄県民が懸念を抱く問題に向き合うため米側が取り組んだこともあるが、結局は日本政府が『辺野古移設が最善の選択肢だ』と感じ、実行しているにすぎない」
「軍事的視点での最善策は長い滑走路である普天間飛行場が残ることだ。辺野古移設は米軍にとって妥協だ。領海・領空侵犯が増える中で日米安全保障条約の防衛義務を果たすために、沖縄が今後も重要になるだろう」
(聞き手 松堂秀樹)