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『日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年』 日本の外交無策あぶり出す

『日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年』山本章子著 中公新書・924円

 在日米軍の駐留条件を定めた日米地位協定の運用実態が、日本の独立回復前に取り交わされた「日米行政協定」と今も変わらない現実を突き付ける書だ。

 筆者は外交文書の解読を通して沖縄に過重な基地負担が集中してきた歴史的経緯をひもとき、日本のいびつな安全保障政策を告発してきた。本書は沖縄の日本復帰で期待された基地負担の大幅な軽減が、米国務省に対する米軍部の抵抗で骨抜きにされた暗闘なども描きながら、今なお米軍の自由な活動を下支えする日米地位協定の問題点を網羅的に解説している。

 さらに新史料を基に、米軍北部訓練場の大部分が日本復帰前に返還可能だと日本政府が認識していたにもかかわらず、約半世紀放置していた事実も取り上げている。米軍が提供を望む限り、日本側が応じざるを得ないという日米地位協定の問題点の核心部分を突いた内容は、現在の米軍普天間飛行場返還・移設問題にも通底する。

 著者がとりわけ問題視するのは、日米行政協定の内容を実質的に継承すべく密室で取り交わされた地位協定の「合意議事録」の存在だ。行政協定から地位協定への更新による主権回復を「形骸化」させてきた合意議事録が国民に知らされず効力を持ち続け、在日米軍が基地の排他的管理権を維持。提供施設外でも日本側の許可を得ることなく訓練し、住民生活に影響を及ぼしてきたことを指摘する。

 ドイツやイタリアが冷戦終結の機に米政府と交渉に臨み、駐留米軍に対する国内法の適用、基地への立ち入り権や管理権の保持などで大きな前進を勝ち取った経緯も紹介し、日米地位協定を一度も改定していない日本の外交無策をあぶり出す。

 本書は日本国内の法整備や民主主義の観点からも正当性が疑われる合意議事録の撤廃など、今後の改定議論に向けた提言も行っている。「日米地位協定は沖縄の問題ではなく、日米安保条約の問題であり、日本全体が問うべき問題である」という結びで、国民世論に問い掛ける筆者の言葉が重みを感じさせる。

(島袋良太・琉球新報記者)

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 やまもと・あきこ 1979年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。琉球大学専任講師。県が設置した米軍基地問題に関する万国津梁会議の委員を務める。主な著書に「米国と日米安保条約改定・沖縄・基地・同盟」(吉田書店)など。

 

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