日本の子どもの貧困率はOECD平均を上回り、世界的に見て非常に高い。貧困ラインは所得分布で人数が一番多い「中央値」の半分で、4人家族で月20万円ほど。生活保護基準より低く那覇や東京では暮らせない。この額よりさらに少ない層も多い。絶対的貧困にも相当してかなり深刻だ。
相対的貧困はゼロにできる。手当を足すなど所得がラインを超えればいいだけ。するかどうかは社会、私たちが決めることだ。
働けばどうにかなったのは過去の話。今、日本の失業率は先進国で最も低く、親たちは十分働いている。特に沖縄では全国以上に母親も働いている。1995年以降の労働法制改悪で、親の非正規労働が増え、子育て世帯の所得は15年で100万円近く下がった。
日本は子育ての公的負担が少なく、子どもの養育が家族の経済力に左右される家族依存社会だ。経済的理由で子どもが進学を諦め、生活費のため体を壊すほど働くような状況は、世界的にもまれ。家族主義で貧困問題が自己責任にされる。
貧困対策は、教育を重視し子ども自身に「頑張って抜け出して」と求めるのではなく、働いても増えない親の所得を改善し、子どもたちの今の苦しさを解消しなければならない。
(山野良一氏、沖縄大教授)