沖縄経済は長期にわたって好調を維持し、日本銀行那覇支店(桑原康二支店長)が発表する月例の県内金融経済概況でも「拡大」の判断が続く。一方で米中貿易摩擦など海外情勢はめまぐるしく変化し、今後は県経済にも影響を及ぼす可能性もある。沖縄を取り巻く現在の状況や好況の背景、今後の見通しなどについて、桑原支店長から話を聞いた。
―沖縄経済をどう見るか。
「今年の最初に予想したよりも景気の拡大が続いている。世界景気に目を向けると製造業が厳しさを増す一方で、非製造業は底堅く推移する。沖縄は製造業がほとんどなく、世界的な貿易摩擦の影響を受けていない。沖縄は観光を中心に拡大しているが、ペースは落ちているとも感じる」
―ペース減速の要因は。
「日韓関係の悪化で韓国からの旅行者が減り、中国の景気減速で今後は旅行者の大きな伸びが期待できない。国内客も災害などの影響で伸びが鈍化している。政治や自然環境が要因だが、これはボディーブローのように効いてくる。人口が伸びる沖縄が成長地域と見られて、県外や海外から企業が進出している。県内需要の伸び以上に供給が増えると、競争が激化し、値下げ競争などで企業収益は悪化する。住宅や小売店、宿泊施設で供給過剰になると見込まれる。それによって景気が減速する可能性もある」
―長く続く好況の功罪は。
「景気拡大で企業収益が伸びて県民所得が増え、失業率や有効求人倍率は本土並みになった。一方で非正規社員の多さや本土との所得格差など課題も残る。企業はまだまだ売り上げを伸ばす余地がある。生産性向上を図り、売り上げを伸ばしている企業の事例を参考にする必要がある」
―沖縄はバブル状態にあると思うか。
「かつてのバブル期は実需がないのに不動産価格が上がっていた。今の沖縄は観光客が増えており、ホテルなどの需要がしっかりある。今後、土地価格が下がる時期が来たとしても、それはバブル崩壊ではなく、景気循環の中で起きたことだと言える。宮古島は開発過程にあり家賃上昇などが起きている。いずれは落ち着くはずだ。開発後にリゾートアイランドとして発展できるかが重要だ」
―沖縄経済のあるべき姿は。
「観光を主力産業にしている現在の方向性は間違っていない。外国客を呼び込むことで、沖縄観光やサービスを海外に輸出するのと同じ効果がある。沖縄で製造業を大きく伸ばすのは簡単ではないが、得意とする観光に力を注ぐことは現実的だ。今後は観光の質の向上も目指すべきだ。観光消費額の拡大に向けて、官民が協力して課題解決に取り組むことが求められる」
(聞き手・平安太一)