観光業が沖縄経済をけん引し、長期にわたって続く好景気を後押しする。一方で観光客の急激な増加がオーバーツーリズムを引き起こすなど、課題も多く見えてきた。観光を主体とした沖縄経済の背景や今後の展望、課題解決のための方策について、名桜大国際学群観光産業専攻の大谷健太郎上級准教授(政策科学・観光政策論)から話を聞いた。
―観光が好調を保つ要因は。
「日本が国を挙げて観光政策を進め、沖縄ではモノレール延長や那覇空港第2滑走路増設などインフラ整備が進められる。最近は旅行が大衆化し、SNS(会員制交流サイト)で情報発信することで多くの人を誘客できる。沖縄はアジアに近い好立地。沖縄観光ブームはここ15年近くで定着し、魅力も浸透した」
―沖縄観光の活況が生み出した課題は。
「人材不足と土地の高騰が代表的と言える。人件費が高騰する一方で、上昇分の賃金を支払えるほど県内企業体力が追いついていない側面もある。県内では高い給与を得られないことから、優秀な人材が県外や海外に行ってしまうケースもある。力のある人材が活躍できる場所も必要だ。生活レベルの視点で見た場合、土地や家賃の高騰はひずみを生むことになる」
―近年はオーバーツーリズムの懸念も出る。
「観光の発展はさまざまな変化を生んで、経済効果に比例するようにデメリットがフォーカスされる。旺盛な観光需要に対応するための大規模開発のほか、地域まで観光客が入り込むケースなど、住民生活への影響が出てくる。本来は住民生活の質を高めることが観光の目的だ。しかし経済効果を実感できない人がいるほか、デメリットへの懸念に対する対策が慢性的に不足している」
「経済効果を実感できるまでにタイムラグが生じるため、現状は観光の効果を実感できていないはずだ。持続可能な観光を進めるために、規制や課税などの公共政策だけではなく、観光客の意識を高めることも重要になる。環境や地域への配慮など高い意識を観光客に持ってもらうことで、住民とのトラブルなどオーバーツーリズムを回避できるはずだ」
―沖縄観光の発展に必要なことは。
「県民や地域住民の生活を向上させるために観光に取り組むという、原点に立ち返る必要がある。観光客の満足度だけではなく、地域住民の満足度も指標として取り入れるべきだ。交通渋滞や所得の状況など、細かい項目で満足度を調査し、それぞれの原因を分析することも求められる。住民満足度の状況など指標を管理することで、沖縄の観光はさらに発展すると考えている。原点である住民満足度を向上させることを目標に定めるべきだ」
(聞き手・平安太一)