首里城正殿など主要7棟を焼失した火事から1週間がたち、火災時の城郭内の様子が徐々に明らかになってきた。那覇市消防局は7日午後に開いた会見で、正殿北東にあった「分電盤」からつながる延長コードに「溶融痕」という焼けて溶けた痕が30カ所以上見つかったと発表した。火災原因につながるショートを起こした痕跡を示す「短絡痕」だった可能性もあり、同局が火災原因との因果関係を慎重に調べている。
延長コードは正殿の北東側から発見された。市消防局の山城達予防課長は「常時電源が通っている状態だった」としており、正殿内に設置されていたLEDの照明器具の電源として利用されていたという。
市消防局によると、延長コードは正殿北側にある分電盤側面のコンセントにつながっており、このコンセントは分電盤から電気が供給されるようになっていた。コードには30カ所以上の焼けて溶けた溶融痕と呼ばれる痕跡があった。
首里城を管理・運営する沖縄美ら島財団や県などが行ったこれまでの会見では、このコードの存在について明らかにしていなかったが、山城予防課長は溶融痕について「配線同士が接触してスパークした結果生じる短絡痕だった可能性がある」と指摘。「火災原因の特定につながっていくと思う」として、今後詳しい分析を進めると明言した。
日本防火技術者協会の鈴木弘昭理事によると、溶融痕は火災熱によって生じるのに対し、短絡痕はショートを起こして発火した痕跡であるため、火災原因になり得るという。
鈴木理事は、短絡痕が原因となる火災のメカニズムについて「コードの内部の電線を損傷する『半断線』を起こすと、損傷部分では電気抵抗が大きくなるため、熱が生じて電線を覆う被覆材が溶ける。そのために隣り合う配線同士が接触し、ショートして発火の危険性が高まる」と話した。