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県民生活との調和必要 沖縄観光コンベンションビューロー・下地芳郎会長 〈熱島・沖縄経済 第2部〉20


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
下地芳郎会長(沖縄観光コンベンションビューロー)

 好調を維持してきた沖縄経済の中核となる観光産業。2020年3月の那覇空港第2滑走路の供用開始も控える中、世界の観光地で問題が持ち上がる「オーバーツリーズム」への対応も課題となる。沖縄観光の課題や今後の変化について沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長に話を聞いた。

 ―沖縄の観光は今後どのように変化していくか。

 「日本は人口が減少しているが世界では中間層が増えており、国際観光のマーケットが拡大していく。特に経済発展が進むアジアの市場はますます大きくなる。沖縄はアジアと日本をつなぐ場所にあり、クルーズなどでも優位性がある」

 「リゾート地で仕事をするワーケーション(『ワーク』と『バケーション』を組み合わせた造語)も一つの市場だ。レジャーだけではなくビジネス目的の訪問客が出てくるなど沖縄の観光は多様化が進んでいく」

 ―那覇空港第2滑走路の供用開始で沖縄の観光はどう変わるか。

 「完全な24時間運用ができる空港として深夜便の受け入れが可能になる。飛行機の発着遅れなど既存便の課題は解決されるが、深夜便で来た客をサポートする2次交通やホテルの受け入れが課題となってくる」

 「航空路線の誘致競争はますます激しくなる。アジアの航空は成長段階で、エアラインで航空機の購入も進んでいる。沖縄で新しい滑走路ができたことは誘致においてPR材料になるが、駐機スポットの準備や地上支援業務の対応、着陸料の優遇策といったインセンティブをどう出していくかなど、那覇空港の経営が問われてくる。官民一体となった体制を強化する必要がある」

 ―オーバーツーリズムについてどう見るか。

 「観光地に行って大型ホテルに泊まっていた時代とは違い、観光客が生活エリアに入ってくるようになった。民泊や御嶽の観光など『地元の人が行くところに行きたい』というニーズがある。沖縄の文化を深く知ってもらう良い機会ではあるが、住民生活との接点が増えることで問題も起きてくる。入ってはいけないラインを決めるなど、観光客とのコミュニケーションを取る必要がある」

 ―今後沖縄の観光で重要なトピックは。

 「最先端のテクノロジーを観光にどう生かすかは大きなテーマだ。来年以降は第5世代(5G)移動通信システムの活用も進む。例えば悪天候の日や冬場などにテクノロジーを使って沖縄の海を体験するなど、体験を深めるためのツールになる。リピーターが増える中で、より深い情報を知りたいという需要がある」

 ―持続可能な観光開発のために必要なことは。

 「沖縄の観光が国内外から高い評価を受けているのは事実。さらに経済効果を高め、県民生活との調和を図る必要がある。これまで観光客数を増やそうと取り組んできたが問題も出てきた。『住んでよし、訪れてよし、受け入れてよし』のサイクルを回すことが大事だ」

 (聞き手 中村優希)
 (おわり)