国指定天然記念物で絶滅危惧種のリュウキュウヤマガメとセマルハコガメ計64匹が盗難にあった沖縄市の動物園「沖縄こどもの国」。いなくなってから9日後に被害届の提出に至った。7日に開いた記者会見で、園を管理する公益財団法人沖縄こどもの国は職員間の連絡の経緯について説明し「連絡体制を整理していく」と決意を述べた。神里興弘園長は「県民にとってかけがえのない大事なもの」と強調した。園の管理体制の見直しはもちろんだが、沖縄の固有種の保護・管理体制について、県全体での協議も急務になっている。
■増加する密猟と保護
盗難にあったリュウキュウヤマガメなどの希少種は海外を中心にペットとして需要が高く、ここ数年、密輸やネット販売が横行している。1匹当たりの価格は数十万円。県は密猟防止のため、今年8月から国頭村内の県営林道を夜間通行止めにする実証実験を始めた。県の取り組みに先んじて、環境省は2012年度から夜間パトロールを実施しているが、生息地から離れた場所で保護される事案は後を絶たない。
希少な野生動物を保護した場合、県内で飼育、保護できる民間の施設は同園を含め数カ所に限られている。生息地が分かれば自然に返されるが、生息地不明の固有種は保護施設で飼育、管理される。「保護しない年はない。カメは長生きするので毎年増え続けている状態」。飼育担当の職員はため息交じりに窮状を漏らした。
■県・国の予算措置なし
今回の事案を受け、園は再発防止策として展示場のネットを金属製のものに取り換えるほか、防犯カメラの設置や人感センサーの導入などを挙げた。
沖縄市の公共施設である同園は、ハード面を市の予算で、管理運営は指定管理者として委託されている財団が請け負う。県や国からの予算措置などもなく、職員の人件費や教育などのソフト面は委託費のみで賄われている状態だ。人感センサーの導入など大規模な工事について、園は「費用次第では市にも相談したい」とし、市も「園と協議した上で必要であれば検討する」との考えを示す。
天然記念物などの管理について、専門家は県や国を含めた行政主導の体制強化を提唱する。琉球列島の希少動物に詳しい伊澤雅子琉球大教授は「長期間の保護の場合に行政機関が管理する施設がない。保護だけでなく教育や啓発活動も民間に頼っている状態だ」と指摘する。「世界自然遺産登録を目指す中で、ソフト面の課題解決が追い付いていない。せめて人や予算の配置をすべきだ」と話した。
頻発する盗難被害を未然に防ぎ、沖縄の固有種を保護する責任を果たすためにも、県全体での管理体制の改善が求められている。
(下地美夏子)