異例 玉城知事が閣僚会議出席、その狙いは? 沖縄でささやかれる懸念は?


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玉城デニー知事

 首里城の早期復元を掲げる玉城デニー知事が12月初旬に開催予定の関係閣僚会議に出席する方向で調整が進められている。政府の関係閣僚会議は規定上、関係者の参加も認めているが、沖縄県知事が出席するのは極めて異例だ。再建に向け、全面的な支援を約束した政府が県に配慮した格好だ。一方、同じく「沖縄の皆さまの気持ちに寄りそう」としてきた辺野古新基地建設を巡っては、関係閣僚会議などに知事が参加したことはなく、基地問題への対応との差が際立つ。

 関係者によると、知事の関係閣僚会議の参加は官邸側が決定し、打診した。25日に開く関係閣僚会議の幹事会には謝花喜一郎副知事らも出席し、協議事項などについて調整を進める。

 政府関係者は「火災翌日には知事自ら菅義偉官房長官に面会して再建に協力を求めた。長官も『やれることは全てやる』と答え再建にまい進している。基地問題は関係ない」とし、議論を急ぐ必要性を指摘する。

 首里城再建では接近する県と国だが、辺野古新基地建設を巡って激しく対立してきた。26日には、県が埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法として取り消しを求める「抗告訴訟」の第1回口頭弁論が開かれる予定で、県は工事を強行する政府を批判するとみられる。

 こうした中で知事を関係閣僚会議に招待することに、菅氏に近い国会議員の一人は「政府が沖縄に寄り添っている姿を見せる機会だ」と話す。「再建に協力しても辺野古に関して知事が態度を軟化させることはない」と見るが、“雪解けムード”を演出することで、県内外で根強く残る辺野古移設反対の世論を軟化させようとの思惑もにじむ。

 政府の動きに対し、知事周辺からも「辺野古ノーと言いづらい環境ができないか」との懸念の声が上がる。与党県議の一人は「辺野古移設中止という訴えを諦めつつある人たちが、首里城再建で沖縄に寄り添う政府の姿勢を見て容認に転じないだろうか」と複雑な心境を吐露した。

 県関係者は、政治利用される可能性を懸念しつつも「今はその懸念を表だって言えない」と話す。閣僚会議の出席について「呼ばれたのに出席しないとなれば『どういうことか』となる。難しい立場だ。協力を取り付けながらも利用されないよう慎重に対応しなければならない」と語った。
 (松堂秀樹、明真南斗、知念征尚)