10代のひとり親世帯「対応できず離れたのかも…」 地域に応じた支援がカギに 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉10


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「那覇市母子生活支援センターさくら」。若年母子への支援の難しさに直面している=那覇市

 沖縄の子どもの貧困率の高さは全国と比べて県民所得の低さや、ひとり親家庭の出現率の高さに要因があると考えられている。県の2018年度ひとり親世帯実態調査によると、出現率は母子世帯4・88%、父子世帯0・74%となり、依然として全国比約2倍の状況だ。

 中でも10代のひとり親世帯への支援は貧困の連鎖を断つための課題として横たわる。母子世帯を保護、支援する「那覇市母子生活支援センターさくら」は10年前の入所者平均年齢が37・8歳だったが、3年前から10代の入所が増加。16年度は10代が全体の1割強を占め、20代を合わせると約5割に達し平均年齢も30歳に下がった。しかし18年度からは再び10~20代が減少した。

 要因について當眞郁子施設長は「10代の様相が変わってきた。若年母子になかなか対応できず、結果離れていったのかもしれない」と分析する。沖縄も全国と同様に核家族化が進み、地縁血縁の支え合いが薄れているほか、インターネットやSNSの普及で行動範囲が広がるなど社会の仕組みが変化しているとして「若年母子のケアが今後の大きな課題だ」と語った。

 一方、県民所得は13年の県教委委員会調査によると、小中高校生がいる世帯で世帯所得が300万円未満の世帯が43・3%を占めた。全国の14・9%よりも28・4ポイントも高くなるなど低所得中心の構成となっている。さらに文部科学省の19年度学校基本調査(速報)によると、県内進学率は高校が97・3%、大学は40・2%だった。年々向上しているものの、全国は高校98・8%、大学54・7%と依然差が大きい。

 内閣府子どもの貧困緊急対策事業に関わっている沖縄大の島村聡准教授は経済的貧困が進学意欲の低下や社会的つながりの希薄化などを招いているとし「沖縄は幼少期から本来すべき経験の機会を逸している子が多く、これに対処する政策が立ち遅れていることが見えてきた」と説明する。その上で、教育や福祉、医療など関係機関の縦割りが壁となり、施策効果を発揮できていないとして「地域を巻き込んで互いが開くことについて真摯に取り組む必要がある」と指摘した。

 県子ども未来政策課によると、子どもの貧困対策のため県が16年に創設した6年間30億円の基金は3年で約4割を執行した。市町村への支援員配置や子どもの居場所拡充など応急的施策を進めてきたが、同課の下地常夫課長は「残り3年で解決する問題ではない。長期的取り組みが必要なことは分かっている。全庁的な課題として議論しないといけない」と次期振興計画での位置付けを重視する。

 この間に地域それぞれに必要な施策も浮き彫りになってきた。ただ子どもの貧困対策計画を独自に策定しているのは県内市町村で宜野湾市やうるま市、与那原町の3市町にとどまる。今後は地域の実情に合わせた支援の仕組みづくりが対策推進の鍵を握る。

(謝花史哲)