芸能・文化

『ハワイと沖縄 日誌・映画、二世たち、捕虜たち』 海外県人の心情に迫る

『ハワイと沖縄 日誌・映画、二世たち、捕虜たち』仲程昌徳著 ボーダーインク・2200円

 5年前にハワイの沖縄戦体験者を取材していたころ、著者の調査を読み息をのんだ。ハワイ生まれの2世は祖父母と暮らすため沖縄に渡り、学徒兵として沖縄戦に動員された。米兵の兄が戦場で探しているとは知らず、弟は米軍に銃を向けた。捕虜として故郷ハワイに移送後、現地で父母と再会した。その当事者、故・儀間昇さんの体験を取材していたころだった。

 新刊に含まれる調査「ハワイに送られた捕虜たち―邦字新聞二紙に見られる捕虜関係の記事紹介」を偶然手にすると、儀間さんの解放を伝える1946年6月6日付の『布哇(はわい)タイムス』について触れていた。儀間さんの証言を裏付けるものだった。70年前と現在、ハワイと沖縄が一挙につながった。ページをめくる手が震えた。

 儀間さん自身も報道された事実を知らなかった。当時の新聞の写しを後日届けると、食い入るように読む姿が目に焼き付いている。

 著者は沖縄文学を長年研究し、ハワイ県人の視座からも、ひもといてきた。邦字紙のほか歌や日誌、映画の文化活動の視点から、揺れ動くウチナーンチュの心情を浮き彫りにする。

 森山静子は呼び寄せ花嫁として1918年にハワイに渡り、主婦目線から見詰めた移民社会と日々の暮らしを題材に詠歌に取り組んだ。沖縄戦終結から1年が経過しても沖縄の市民レベルの情報は入らず、ハワイの県人の不安は膨らんだ。森山は冒頭「音信絶えて幾年か 生死の程も分たねば 母よ恋し仰ぐ空 淡濃の雲が流れ行く」と歌う。海が隔てているが、空はつながる。そんなやるせなさと焦燥感が作品から伝わる。

 いま、この思いをより理解できるのではないか。首里城が焼失し、喪失感にある人も多いだろう。海外に暮らす県人も同じ思いを抱き、再建に向けた支援は世界に広がる。本書はそんな海外のウチナーンチュの心情に迫る。一方、通読するには沖縄移民史の基礎知識があった方がよい。

 県人初の海外移民が沖縄をたったのは1899年12月5日で、翌月にハワイの地を踏んだ。120年の歩みを見詰め、さらに進める上で、忘れてはならぬ思いが詰まった1冊だ。(島袋貞治・琉球新報記者)

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 なかほど・まさのり 1943年南洋テニアン島生まれ。73年、琉球大学法文学部助手として採用され、2009年定年で退職するまで同大学に勤める。著書に『山之口貘―詩とその軌跡』、『沖縄の戦記』、『沖縄系ハワイ移民たちの表現』など多数。

 

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