観光振興の影で…ホテル開発で環境破壊 住民が異を唱えても開発が許可される理由 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉13


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北半球最大級とされるサンゴ礁群のある白保の海

 伝統文化が根付き、静かな集落で人々の生活が営まれている石垣島の白保集落。近くには国立公園の貴重なサンゴ礁群も広がる。観光客もその魅力に引かれ訪れるこの地に2016年、ホテル建設計画が持ち上がった。利用者は年間10万人とされ、排水によるサンゴ礁破壊や生活環境への影響など住民の間に強い懸念が広がった。17年11月、白保公民館はほぼ全会一致で計画に同意しないことを決議。その後、県は開発を許可したが地域住民は建設の差し止めを求めて事業者を提訴し、現在も係争中だ。

 県は沖縄21世紀ビジョン基本計画で「沖縄らしい優しい社会の構築」を掲げ、自然環境の保全、再生や適正利用の推進、島しょ地域の特性を踏まえた循環型社会の構築などに取り組んできた。しかし観光振興の影で自然環境の劣化や地域住民の意向に反した乱開発が各地で進んでいる。

 石垣市自然環境保全条例は、開発行為内容について住民の同意を得なければならないと規定している。市は条例に基づき、同意を得ていない開発行為は適切であると認められないとして「不同意」の意見を付け、17年11月、許認可者の県に申請を進達した。県は18年3月28日、都市計画法の基準を満たしているとして開発を許可した。

 住民が異を唱えてもなぜ開発が許可されるのか。県建築指導課の池村博康班長は「都市計画法は基準を満たしていれば許可しなければいけないという規定がある。基準に地元の合意を得ているかどうかは入っていない」と話す。同法には道路、土地造成、排水などの定めがある。

 これに対し石垣市白保でのリゾートホテル開発計画に反対する「白保リゾートホテル問題連絡協議会」の柳田裕行さん(56)は開発許可が出たと知った時の衝撃を語り、許可を与えるかについて「住民の意向が反映される仕組みが必要ではないか」と語る。

 白保の海はアオサンゴをはじめ120種以上のサンゴが生息し、アオサンゴ群落は北半球で最大級とされる。事業者の計画は、浄化槽の処理水を公共用水域等に放流せず敷地内で土壌に浸透させる「地下浸透排水」。八重山保健所は排水が地下水に流れ込む懸念を示した。県環境部からはサンゴ礁生態系に影響を及ぼさないような十分な配慮を求める意見も出された。

 柳田さんは、都市計画法は環境保全面で基準が緩いと指摘。サンゴ礁の減少につながる海域の富栄養化への規制も県にはないとした上で「全国一律の基準を当てはめるだけでなく、地域にあった基準も必要だろう」と指摘する。自然環境の保全と経済活動の両立をどう図るのか。持続的な観光の在り方や、貴重な自然環境を次世代に引き継ぐための政策が問われている。

(大嶺雅俊、中村万里子)