米国防権限法最終案、識者はこう見る 猿田佐世氏(新外交イニシアティブ)


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 上下院の擦り合わせを終え、米国防権限法の最終案が発表された。元の上院案では米軍再編計画を再検証せよとの条文が含まれ、受け入れ地における米軍駐留の支持・不支持の調査や配備計画変更の提言までをも求めるものだった。上下院合意後の法案では、国防長官に報告を求めてはいるものの、その内容は米軍再編計画の実施状況等にとどまり、また、その報告が計画変更につながるものではない旨、付記されている。上院案は政府監査院(GAO)の報告も求めていたがそれも削られ、国防省のみに報告を求めている。

 そもそも、なぜ上院案が再検証を求めたか。当然ながら現行計画の変更を望んでいたからである。上院案は、自らの州に基地を呼び込みたい議員により作られ、上院を通過した。実際、この条文の支持者は軍への親和性の高い議員である。何としても基地を誘致したい彼らは、トーンダウンした合意案を「まずはこの程度に落ち着いた。次の手は」と考えているだろう。

 「日本政府の同意がない限り変更を検討してはならない」との強い付記には日本政府の働き掛けが見え隠れする。としても、今回のこの一連の過程は、米議会に米軍再編の見直しを求める声があることを示し、その声が、それを阻止したい勢力とせめぎ合っていることが見える貴重なものであった。ともに動くべき人々が見えた重要な機会を今後の沖縄の取り組みに生かしたい。

 法成立の半年後に国防長官から報告書が出される。報告には基地建設の状況、また米軍配備についての変更提案があれば、それも含まれる。沖縄に確固たる反対の声があること、また、軟弱地盤の存在などについて訴えていかねばならない。

 なお、同法案の別条項では、在日米軍駐留に対する日本の負担についてGAOに報告を求めているが、例として辺野古基地建設も挙げ、これが日本の貢献と評価される場合には計上を、とGAOに判断を求めている。これまでGAOは辺野古案に一定の懸念を示してきた。GAOの報告にも注目したい。